名詞句の意味については,すでに人手によって詳細な意味分類(島津ほか 1986)が行われてきた.また,本章で対象とする「の型名詞句」についても,人手に よる標本分析の結果として種々のヒューリスティックスが提案されており,名詞 間の接続強度と用例を併用した解析方法の研究(江尻, 宮崎 1998)では,9割 前後の係り受け精度が達成されている.しかし,計算機による解析では,解析精 度の問題など,まだ多くの課題を残している.係り受け解析としては,コーパス に基づく方法として,単語の共起情報を用いて係り先を決定する方法(佐々木 1995),複合名詞に意味クラスの共起情報を用いて係り先が決定される確率を求 める方法(小林 1996)などがある.名詞句翻訳では,生成語彙論の立場から,語 彙情報によって英語表現を生成する方法(菊池,白井 2000)もあるが,精度は 不明である.また,大量の対訳例の中から意味的に類似した表現を発見し,翻訳 結果を得る方法では,収集される用例は,通常,スパースであり,適切な用例が ないときは,結果は保証されないことが問題であった.
本論文の方法は,名詞句の持つ意味的な構造に着目した受け規則が生成できる
ので,比較的少ない事例から相対的にカバー範囲の広い構造規則が生成できると
期待される.