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(1)文法属性規則の生成

$AのBのC$」の形の名詞句では,変数部分はすべて名詞であるため,図1の文 法属性体系の中の体言(名詞)の部分で示される文法属性を使用した構造規則を 考える.具体的には,使用する文法体系は図10の通りとする.

図: 名詞の文法属性体系
\begin{figure}\begin{center}
\epsfile{file=zu10.eps,scale=0.8}
\end{center}\vspace*{-4mm}
\end{figure}

ここで,図10の構造を見ると,各文法属性間の段数は少ないから,最終段の文法 属性のみを使用した構造規則を生成する.このようなフラットな分類では,決定 木を作り,それより式(1)の形式の規則を作成する方法が便利である.ここでは, 決定木生成では,プログラムC4.5(Quinlan 1995)を使用する.

その結果,得られた規則のカバー率は,$91.8\%$,また,その範囲での正解率は, $84.8\%$であった.従って,全体の正解率は,$77.8\%$である.得られた構造規則の うち,正解率$85\%$以上を示したものを表3に示す.

表3 解析精度の良い構造規則(正解率 $85\%$以上)
# 文法属性による構造規則 適用される名詞句の例
1 $(\ * \ ,<形式名詞>,\ * \ :B)$ 「昔のままの姿」,「大人のための物語」
2 $(\ * \ ,\ * \ ,<形式名詞>:B)$ 「玄関の石段のところ」,「声楽の勉強のため」
3 $(\ * \ ,<指示代名詞>,\ * \ :B)$ 「湿原の向こうの林」,「海の彼方の国々」
4 $(\ * \ ,\ * \ ,<副詞型名詞>:B)$ 「彼の小説の数々」,「新宿の二丁目の近く」
5 $(\ * \ ,\ * \ ,<指示代名詞>:B)$ 「窓のガラスの向う」,「逢坂の関の彼方」
6 $(\ * \ ,<形容詞転生型>,\ * \ :B)$ 「事件の残酷さの意味」,「もとの静けさの なか」
7 $(\ * \ ,<動詞転生型 \ (自)>,\ * \ :B)$ 「砂のくぼみの中」,「岬のつづきの丘」
8 $(<人称代名詞>,<サ変動詞型 \ (他)>,\ *:B)$ 「彼の指揮の下」,「私 たちの受験の頃」
9 $(<指示代名詞>,\ * \ ,\ * \ :B)$ 「ここの学校の子」,「こちらの膝の上」
10 $(\ * \ ,\ * \ ,<時詞>:B)$ 「父の死の直前」,「山本の訓示のあと」
11 $(\ * \ ,<サ変動詞型 \ (自他)>,\ * \ :B)$ 「ピアノの稽古のため」,「司祭の 不在の間」
12 $(\ * \ ,\ * \ ,<形容詞転生型>:B)$ 「漁夫の生活の厳しさ」,「父の声の暗さ」

これらの結果から,以下のことが分かる.

  1. 得られた規則のカバー率は,意味属性を使用した場合に比べて若干高い.
  2. 得られた規則の正解率は,意味属性を使用した場合に比べて低い.

このうち,1)は,意味属性に比べて文法属性の方がカバー範囲が大きいためと考 えられる.また,2)は,意味属性に比べて品詞コードの分類が少ないこと,中で も大半の事例を構成する名詞は,「一般名詞」に属すため,分解能が低いことが 原因と考えられる.


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Jin'ichi Murakami 平成13年1月17日