田中らと吾郷らは,日本語語彙大系に, 「情緒属性」として,「判断条件,情緒原因,情緒名,情緒主,および,情緒対象」を付与し, 情緒推定用結合価パターン辞書を作成することで, パターンベースの情緒推定の手法を示した[7],[8]. 文と結合価パターンの照合により, 文の表す状況に情緒生起の原因が含まれていることが解析できるようになった. 情緒推定の方法は,もし,入力文と結合価パターンが意味属性制約を充足しながらマッチし, かつ,判断条件が成立するならば, 情緒生起の原因が成立するといえるので, 対応する情緒属性を出力するというものである. ここで,判断条件が成立すると仮定することで,用言の語義に基づく情緒推定が可能であり, 目良らの手法ほど格要素に依存することなく情緒推定が可能である. しかし,判断条件を常に成立すると仮定すると, 過剰に情緒が推定される問題が発生した. そこで,滝川らは,辞書を改良して, 判断条件においての二者の関係の方向性である「接近」と「乖離」の関係を扱えるようにした[9].