本辞書のレコード例を図2.2に示す. レコードには,まず「日本語文型パターン」とそれに対応する「英語パターン」, 「一般名詞意味属性制約」があり, さらに2セットの情緒属性が存在する.
セット1を見ると,情緒原因は〈自由〉である.
〈自由〉は,「条件や制約が減少し,実行可能なプランの数が増加した」という特徴のラベル名である.
「訪れる」という語義だけでは,この特徴をカバーできないが,
1にとって
2が目標実現に有利に働く場所であるならば,
この特徴がカバーできるようになる.
そこで,「目標実現・近(
1,
2)」によって〈自由〉の特徴を補う.
「目標実現・近(
,
)」は,
と
が目標実現に「接近」の関係であることを表す命題関数である.
あえて,粗く命題の意味を与えている.
一方,セット2を見ると,情緒原因は〈制限〉である.
〈制限〉は,「条件や制約が増加し,実行可能なプランの数が減少した」という特徴のラベル名である.
「訪れる」という語義だけでは,この特徴をカバーできないが,
1にとって
2が目標実現に不利に働く場所であるならば,
この特徴がカバーできるようになる.
そこで,「目標実現・離(
1,
2)」によって〈制限〉の特徴を補う.
「目標実現・離(
,
)」は,
と
が目標実現に「乖離」の関係であることを表す命題関数である.
「1が
2を訪れる」は,
「接近」と「乖離」のどちらの判断条件も必要な用言(結合価パターン)である.
判断条件「目標実現・近」と「目標実現・離」の対と,
それに基づく情緒名《好ましい》と《嫌だ》の対が存在することにより,
状況の対称性を考慮した情緒推定を行うことができるレコードの構成になっている.