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辞書の構成

本辞書は,日本語語彙大系の結合価パターン14,819件に, 11,712セットの情緒属性を付与することで作成された[7]. 情緒生起の特徴ラベルを含む,以下の5種類の情報が「情緒属性」である. 各パターンには,0セット以上の情緒属性が付与されている.

本辞書のレコード例を図2.2に示す. レコードには,まず「日本語文型パターン」とそれに対応する「英語パターン」, 「一般名詞意味属性制約」があり, さらに2セットの情緒属性が存在する.

図: 情緒属性付き結合価パターン辞書のレコード例
\begin{figure}\centering
\fbox{
\begin{tabular}{l}
日本語文型パターン:$N$1が$N$2...
...澄表\
セ霆鐚$N$1 情緒対象:$N$2\\
\end{tabular}}
\end{tabular}}\end{figure}

セット1を見ると,情緒原因は〈自由〉である. 〈自由〉は,「条件や制約が減少し,実行可能なプランの数が増加した」という特徴のラベル名である. 「訪れる」という語義だけでは,この特徴をカバーできないが, $N$1にとって$N$2が目標実現に有利に働く場所であるならば, この特徴がカバーできるようになる. そこで,「目標実現・近($N$1,$N$2)」によって〈自由〉の特徴を補う. 「目標実現・近($x$,$y$)」は, $x$$y$が目標実現に「接近」の関係であることを表す命題関数である. あえて,粗く命題の意味を与えている.

一方,セット2を見ると,情緒原因は〈制限〉である. 〈制限〉は,「条件や制約が増加し,実行可能なプランの数が減少した」という特徴のラベル名である. 「訪れる」という語義だけでは,この特徴をカバーできないが, $N$1にとって$N$2が目標実現に不利に働く場所であるならば, この特徴がカバーできるようになる. そこで,「目標実現・離($N$1,$N$2)」によって〈制限〉の特徴を補う. 「目標実現・離($x$,$y$)」は, $x$$y$が目標実現に「乖離」の関係であることを表す命題関数である.

$N$1が$N$2を訪れる」は, 「接近」と「乖離」のどちらの判断条件も必要な用言(結合価パターン)である. 判断条件「目標実現・近」と「目標実現・離」の対と, それに基づく情緒名《好ましい》と《嫌だ》の対が存在することにより, 状況の対称性を考慮した情緒推定を行うことができるレコードの構成になっている.



平成25年2月12日