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自由発話における間投詞および言い直しの出現頻度

自由発話の音声には、「あのー」や「えーと」などの間投詞(冗長語) や、言葉の言い直しおよび言い誤りなどがある。これらの言語現象は、 朗読発声では通常出現しないため、従来の文法の枠組では、あまり考 慮されていない。そこで、自由発話における間投詞や言い直しの出現 頻度を研究した。

なお、本章では間投詞を『活用しない自立語。主語・述語によらない。 言い淀む場合などに、文の中に挿入されて用いられる。間投詞を取り 除いても文の文法性および意味には影響しない[98]。』 と定義した。また言い直しを『前にいった事の誤りを訂正してもう一 度言い換える。』もしくは『他の適当なやさしい言葉で言う。』と定 義した。また言い淀みを『言おうとしてためらったり、話しの途中で ちょっと言葉につまったりする。』 [73]と定義した。 なお表6.2の例文において、``[ ]'' で 括られた個所は間投詞、 ``( )''で括られた個所は言い直しを意 味している。

結果を図6.3に示す。この結果において、間投詞も 言い直しも共にない文は、全体の約5割であった。これらの多くは 「はい」(23%) 「もしもし」(5%) 「はい、わかりました」 (3%) 「どうも、ありがとうございました」(1.5%) などの定型文で、この 種類の8割の文は14文字以下の短い文であった。

図 6.3: 自由発話における間投詞や言い直しの出現頻度
\begin{figure}\begin{center}
\fbox{\epsfile{file=FIGURE/figure3.2.ps,width=100mm}}\end{center}\end{figure}

自由発話の文の約5割は間投詞を含み、多くの単語が続く文の多くは 間投詞を含んでいた。ただし、間投詞には個人差が多く、間投詞を多 く話す話者とあまり話さない話者がいた。また、一人の話者が話す間 投詞の種類は限られていた(”あのー”、”えーと”)。言い直しが ある文は自由発話全体の約1割であった。そして、「はい」「もしも し」などの独立語も間投詞に含めた場合、全体の文の83%(9121文)は 間投詞があった。この中で文頭に間投詞があるものは、全体の文の 65.8%(7303文)であった。また、言い直しがある文の46.1%は、言い 直しの前もしくは後に間投詞が付加されていた。(言い直しの前に間 投詞が付加されているのが 14%、言い直しの後に間投詞が付加され ているのが24%、言い直しの前後ともに間投詞が付加されているのが 8%であった。)

なお、今回調査した自由発話のデータは、ナレータや実際の事務局員 など、言葉の対応に慣れた話者が発話した音声である。したがって、 言葉の応対に慣れていない一般の話者では、間投詞や言い直しの出現 頻度が増加する可能性がある。



Jin'ichi Murakami 平成13年1月5日