はじめに

機械翻訳において“相対的意味論に基づく変換主導型統計機械翻訳(以下,TDSMT)”が提案されている[1]. TDSMTは,学習文対と変換テーブルを用いて,原言語文を入力とし,目的言語文を出力する手法である. 変換テーブルは“ABならばCD”で表現する.
 しかしこの手法で出力文を得るためには,変換テーブルを適用した,入力文が学習文対に完全に一致する必要がある. 従って,入力文数に対して,得られる出力文数が少ないという問題がある.
 そこで本稿では,“相対的意味論に基づく変換主導統型パターン統計機械翻訳(以下,TDPBSMT)”を提案する. この手法は,変換テーブルを“AB” と “CD” の2つに分割する. 次に,“AB”を利用して文パターンを作成する.そして,“CD”を文パターンに適用する. 提案手法によって,従来手法と比較して出力文数が向上する.
 実験として,500文を入力としたカバー率(出力文数/入力文数)の調査を行った. また,翻訳精度の調査として,100文の対比較調査を行った. 実験の結果,提案手法のカバー率は従来手法と比較して向上した.また,翻訳精度は差がなかった.
 本論文の構成は以下の通りである.第2章で従来の研究について説明し,第3章でTDPBSMTについて説明する. 第4章で実験データ,実験結果と評価を示す.第5章で本研究の考察を述べる.