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英語への翻訳

前節で決定した時間関係を英語へ翻訳する場合,[*]ページの表 7の規則を用いて,主節,引用節の個別に翻訳を行う.しかし英語には,主節の動詞が過去 形の場合に、従属節の動詞もそれに応じて形が変化する.これを時制の一致とい う.

時制の一致とは、従属節の事象を,主節の事象と同じ時間基準で捉えることであ る.従って,本稿では,時制の一致が要求される場合,引用節のR(参照時) を主節のRに一致させるという制約条件を導入する,これにより時制の一致を満たすことができる.

例として[*]から抽出した時間関係を翻訳する.主節が過去形であるため, 時制の一致が生じる.引用節のR(参照時)を主節のRに一致させると,図5の時間関係は 次のようになる.


  
Figure 7: 引用節を含む文の翻訳例(1)
\includegraphics[clip,scale=1]{e29.eps}

よって,[*]ページの表7の規則を用いることで,主 節は単純過去形,引用節は過去以後(would)となる.図[*]からは,引用節の「来る」という事象は、発話時以後か以前か判断できな いが、時制の一致が生じ,時間表現の翻訳には,問題が生じない.

また,[*]から抽出した時間関係を翻訳する際も, 時制の一致が生じる.つまり,図[*]は次のように変化 する.


  
Figure 8: 引用節を含む文の翻訳例(2)
\includegraphics[clip,scale=1]{e30.eps}

[*]から,主節は過去形,引用節は過去完了形に翻訳 できる.

次に,例文28のような主節が未来の事象を表し,引用節の動詞 がタ形の例を示す.

 \begin{displaymath}\ \ \ \ \ \ \ 私は、彼が来たと思うだろう.
\end{displaymath} (28)

主節の時間関係 S=R→E 引用節の時間関係 E=R→S

主節の動詞が過去形ではないため時制の一致は生じない.よって複文全体の時間 関係は次のようになる.

  
Figure 9: 引用節を含む文の翻訳例(3)
\includegraphics[clip,scale=1]{e31.eps}

例文28において引用節の示す時間は,主節の時間以前と なるが,主節の時間は発話時以後の事象を表しているため,引用節の事象と発話 時の関係が図9に示すように過去か未来か判断できな い.実際の機械翻訳システムにおいては、時間表現がただ一つ求まることが必要 とされるが,本稿では時間表現が一意に決定できない例として扱うことにする.




2002-03-07