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日本語複文における時間関係

引用節とは,「彼が来ると思う」などの「と」に先行する節のことである.引用 節を取る動詞は,「思う」,「考える」などの思考動詞、「言う」,「聞く」な どの伝聞を表す動詞がある.

日本語における引用節の時間関係を決定するには,主節の時間を基準に決定すれ ばよい.

 \begin{displaymath}\ \ \ \ \ \ \ 私は,彼がごはんを食べに来ると思った.
\end{displaymath} (23)


 \begin{displaymath}\ \ \ \ \ \ \ 私は,彼がごはんを食べに来たと思った.
\end{displaymath} (24)


 \begin{displaymath}\ \ \ \ \ \ \ 私は,彼がごはんを食べに来ると思う.
\end{displaymath} (25)

[*]では,主節の「私は思った」時点で引用節の 「彼がごはんを食べに来る」という事象が以後に行われることを表している.[*]では,同じ時点で「食べに来る」という事象が過 去に行われたことを表している.[*]では,主節の 「私は思う」という発話時現在の時点で,「食べに来る」という以後の事象を表 している.つまり,引用節が表す時間は,主節の時間を基準に考えれば良い.

引用節を含む日本文から時間関係を決定する手順を以下に示す.

なお,主節、引用節の時間関係を決定する際には,単文と同じ5.1.2節の表 23に示した規則を用いる.ただし、表 2において外的動作動詞・変化動詞の場合,発話時と参照時の 関係がS=R=EまたはS→R=Eとなっているが,習慣をあらわす副詞と 用いられている場合を除いて,引用節について は,S→R=Eとする.なぜなら,引用節の動詞のル形は,習慣的な 事象というよりも,主節を基準にした未来の事象について想像したり,伝聞して いるからである.

以下に例を示す.

 \begin{displaymath}\ \ \ \ \ \ \ 私は、彼が来ると思った.
\end{displaymath} (26)

主節の時間関係 R=E→S 引用節の時間関係 S→R=E

  
Figure 5: 引用節を含む時間関係の例(1)
\includegraphics[clip,scale=1.0]{e27.eps}


 \begin{displaymath}\ \ \ \ \ \ \ 私は、彼が来たと思った.
\end{displaymath} (27)

主節の時間関係 R=E→S 引用節の時間関係 R=E→S

  
Figure 6: 引用節を含む時間関係の例(2)
\includegraphics{e28.eps}




2002-03-07