以下の表2で語尾形式 と動詞の分類から発話時と参照時の時間関係を決定する規則を示す.なお,表中 の「*」は,すべての動詞に適用可能である.発話時と,事 象を捉える基準時である参照時との関係は、時間概念のテンスに相当する.
語尾形式 | 動詞の種類 | 時間関係 |
状態動詞,内的動作動詞 | S=R | |
[0cm][0cm]ル形 | 外的動作動詞,変化動詞 | S=R or S→R |
テイル形 | * | S=R |
タ(テイタ)形 | * | R→S |
つまり,「走った」では,過去の事象を捉えているため,発話時と参照時の関係は「R →S」となり,「走っている」では,発話時において捉えているため,「S=R」となる.
また,以下の表3で,語尾形式と動詞の時間的性質から事象時と参照時の関係を 抽出する規則を示す.事象時と,参照時の関係は時間概念のアスペクトに相当する.
動詞の種類 | 完了相(ル形,タ形) | 継続相(テイル,テイタ形) | ||
状態動詞 | E=R | |||
内的動作動詞 | E=R | E(P)=R | ||
[0cm][0cm]動作動詞 | 外的動作動詞 | E=R | E(P)=R | |
変化動詞 | E=R | E→R |
状態動詞はテイル(テイタ)形を取らないため,空欄となっている.
以下に例文を示す.
また,表には示していないが、ダロウ形は文法カテゴリーのモダリティーである
推量を意味する.本来はモダリティー
に関する規則も作成する必要があるが,モダリティーを担う助動詞は多数あるた
め,今回は「ル+ダロウ」のみ扱うことにする.ダロウ形が,終止形と共に用い
られると,未来の事象を推量をこめて述べる.つまり,発話時と,参照時の時間
関係は次のようになる.
ル+ダロウ形 S→R
以下に、表2,3から決定される時間的性質を,
例とともに
説明する.
1.[ル形]
状態動詞,内的動作動詞 : S=R=E
外的動作動詞,変化動詞 : S=R=E or S→R=E
状態動詞のル形は,現在の状態,内的動作動詞のル形は,現在の思考・感情を表して
いる.
では,「ある」という現在の状態,例文9は,現在の思考を発話時から捉えてい
る.
,のように外的動作動詞・変化動詞がル形をとると,現在,または未来の事象を表す.
2.[タ形]
* : E=R→S