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抽象名詞の翻訳手順

名詞の訳し分けでは,複数存在する名詞の訳語を係り先である用言との意味的共 起関係から決定する手法(桐澤ほか 1997)が知られている.しかし,抽象名詞は 訳語が存在しない場合や,係っている節をまとめあげて後置する節へ接続し,英 語表現では接続詞として現れる場合などさまざまである.次に例文を示す.

例文1
子供の時はいつも学校へ歩いて行ったものです.
   As a child, I used always to walk to school.
例文2
桜のきれいなときに日本に来たい.
   I would like to come to Japan when the cherry blossoms are pretty.

例文1は「もの」の直接の訳語が存在しない場合で,例文2は「とき」が接続詞 whenとして現れている場合である.このように抽象名詞は,通常名詞の訳語選択 として使用される手法は適用できないことが分かる.

そこで,本研究では抽象名詞を前後に現れる語と合わせて連語として登録し,さ らに意味を付与することで曖昧性を解消し英語表現を決定する.その際,抽象名 詞を意味的文法的用法から「語彙的意味をもつもの」「補助動詞的用法」「非補 助動詞的用法」の3種に大別する.抽象名詞の分類については第5 節で説明する.

さらに,「の」については交替現象を解析し,他の抽象名詞に置き換えた後に翻 訳規則を適用する.交替現象については第5節で説明する.

以上をまとめた抽象名詞の翻訳手順を図1に示す.


  
Figure 1: 抽象名詞の翻訳手順
\begin{figure}
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\end{center}\end{figure}



Noboru KURUMAI
2001-03-20