Next: 時間副詞による拘束条件
Up: 時間副詞の解析
Previous: 時間副詞の解析
文が表す時間関係には,時間副詞も重要な役割を果たしている.本稿では,時間
副詞をその属性により分類し,時間関係の詳細化に用いる.時間関係の詳細化に
ついての説明を以下に示す.
|
(18) |
が与えられた場合、「行く」は,外的動作動詞のル形
であるから5.1.2節の規則より,以下に示す通り現在の事実や習慣を表す場合と、未来の事象を表す場合の2通りの時間関係が得られる.
S=R=E
S→R=E
しかし,の時間副詞「明日」から時間関係をさ
らに詳細化できる.この時「明日」は,事象「行く」の時間が発話時以後に起っ
たことを表している.そのため時間関係が「S→R=E」の一つに絞ることができる.
本稿で分類した属性を表4に示し、各属性の説明を以下に述べる.
Table 4:
時間副詞の分類表
属性 |
属性値 |
基準時 |
絶対表現, 相対表現(発話時,内容時), 不明 |
基準時とのテンス |
以前, 以後, 同時 |
時間区間 |
時点,開始時,終了時 |
a.基準時
時間副詞の指す時を特定する際に、時間副詞のみで位置を決定できる絶対表現と,基準時を
必要とする相対表現に分類する.例えば「2001年に」は,絶対表現である.相対
表現は,さらに発話時を基準時とする表現、
文脈によって決定される内容時を基準とする表現に分類する.「昨日」は,発話時
の1日前を指しているため、発話時基準.「翌日」は,文脈によって示される内容
時の1日後を指しているため,内容時基準である.
また基準時が判別
不可能な表現は,不明に分類する.「3時から」などがあてはまる.
b.基準時とのテンス
基準時が相対表現の場合には,基準時から見た設定時とのテンスを以前、以後,
同時関係に分類する.同時とは、発話時を含んでおり以前か以後か文脈によって
決定される表現である.
「昨日」,「明日」,「今日」は,発話時基準でそれぞれ以前,
以後、同時を指す.
c.時間区間
時間副詞が表す区間を,時点を明示する表現,開始時・終了時のみを明示する表
現,間隔を表す表現に分類する.「翌日に」,「翌日から」,「翌日まで」,
「3日毎」は,それぞれ時点,開始時,終了時,間隔を指す.
その他に、「よく」や「いつも」,「毎日」のよう
な習慣,反復を表す副詞も対象とする.
以下の表5に分類例を示す.
Table 5:
時間副詞分類例
|
明日 |
翌日から |
昨日まで |
a. 基準時 |
相対表現(発話時) |
相対表現(内容時) |
相対表現(発話時) |
b. 基準時とのテンス |
以後 |
以後 |
以前 |
c. 時間区間 |
時点 |
開始時 |
終了時 |
表5では,
「明日」は,発話時の一日後を指しており、時間区間は時点である.「翌
日から」では,ある内容時の翌日以降を表すため
に,基準時は基準時は内容時基準であり,時間区間は開始時である.「昨日まで」
では,発話時の一日前までを表している.
また表4で分類できない,習慣や反復を表す時間副詞にも,
拘束条件を適用する.
2002-03-07