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まず、各々の用言に対して、どの格要素と用言の用法を判断するために、結合価
パターンのマッチングを行なう。これは、対象とする用言の標準表記をキーとし
て、辞書から結合価パターンの候補を読み出し、用例側の助詞と名詞の対応関係
を照合することによって行う。この場合、誤った格要素は採用しないために、以
下の制限を加える。
- 1
- 着目する用言の直前までの格要素とする。
×遠足に行ったけど、○雨が降ったので…
- 2
- ただし、ハ、モ、など述語を越えて係る可能性が大きい(京都大学の
コーパスで調査の結果、直近の述語に係る確率が90%未満)ものは、用言
を隔てていても格要素の候補として挙げるとする
○僕らは、×遠足に行ったけど、
○雨が降ったので…
- 3
- 重なる格があれば用言に近い方を採用する。
僕らの×自由を、僕らの○青春を大げさに
言うのならば…
このような制限を加え、候補となる用例中の格要素と結合価パターンとのマッチ
ングを行い、用法と用言の取る格要素を判断する。この際、結合価パターンにお
ける、格要素が適合した格の名詞意味属性の深さをスコアとすることで、より具
体的な名詞を取ることのできるパターンを選択することになり、最尤なパターン
を判断することができる。
また、用言が受け身、使役になっている場合については、用言の標準表記(終止
形)である場合に取る格助詞と異なる格がある。このような場合は用例の格助詞
を標準表記に合わせ、変換し用言と格要素の候補の対を作成する。今回は、以下
の変換を行った(表
,)。
この変換については今回の用例での場合であり、他の用例での場合この限りでは
ないと思われる。格助詞の変換についても課題が残っている。
Table:
格助詞の変換(使役)
|
格助詞 |
|
変換前 |
変換後 |
使役 |
ニ格あり |
ヲ |
ヲ |
|
|
ニ |
ガ |
|
ニ格なし |
ヲ |
ガ |
Table:
格助詞の変換(受け身)
|
格助詞 |
|
変換前 |
変換後 |
受け身 |
ニ格あり |
ヲ |
ヲ |
|
|
ニ |
ガ |
|
|
ガ |
ニ |
|
ニ格なし |
ヲ |
ガ |
|
|
ヲ |
ヲ |
例えば、「温度を測る装置」であれば、「測る」の標準表記は「計る」となり、
結合価パターンには3つの用法が登録されている。用例の格要素のうち、「温度」
が最初のパターンのヲ格「名詞」に当てはまり、「名詞」は深さ1のノードであ
るので、スコアは1となる。また、他のパターンに対しては当てはまる格がなく、
この「温度を測る装置」の用法は「身体動作」である(1)の用法が選択される
(表 )。
Table:
結合価パターン選択
|
ガ格 |
ヲ格 |
用言 |
用例 |
(なし) |
温度を |
測る |
|
主体 |
|
[0pt][0pt]名詞 |
|
測る(1) |
結合価 |
機械 |
[0pt][0pt]× |
|
○ |
(身体動作) |
パターン |
[0pt][0pt]人 |
[0pt][0pt]× |
[0pt][0pt]生理(その他) |
[0pt][0pt]× |
測る(2) |
|
|
|
|
|
(身体動作) |
|
[0pt][0pt]主体 |
[0pt][0pt]× |
思想 |
[0pt][0pt]× |
測る(3) |
|
|
|
意向 |
|
(事象) |
こうして選択した結合価パターンに対し、底の名詞が格要素として用言と関係を
持てるかどうかを判定する。連体節述語の場合、底の名詞が格要素として動詞と
関係を持てるのならば内の関係、持てないのであれば外の関係と仮定して、底名
詞と用言の関係を含めたパターンを作成する。
前述の「温度を測る装置」であれば、先ほど選択された「測る」のパターンに対
して、空いている格であるガ格に対し、「装置」を入れて「装置が温度を測る」
と言える用法であるかどうかを判断する。この場合、「装置」にふられている
「機械」としての意味が「測る」のガ格の「機械」に当てはまるので、「装置が
温度を測る」というパターンとなる(表 )。
Table:
底の名詞の挿入
|
ガ格 |
ヲ格 |
用言 |
用例 |
(装置) |
温度を |
測る |
結合価 |
主体 |
|
[0pt][0pt]名詞 |
|
測る(1) |
パターン |
機械 |
[0pt][0pt]○ |
|
[0pt][0pt]- |
(身体動作) |
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asano
2000-03-15