述部を2つ又は3つ含む重文と複文(記述文)を対象に前章で述べた方法により文型パターン化を行った.重文,複文を文型パターン化の対象としたのは以下の理由による.すなわち,日本語表現のうち,単文の非線形構造については,既に日本語語彙大系(池原悟,宮崎正弘,白井諭,横尾昭男,中岩浩巳,小倉健太郎,大山芳史,林良彦 1997)においてまとめられており,高品質の翻訳が可能となっているのに対して,重文複文の非線形構造については,類似の知識ベースがなく,訳文品質は依然として低いレベルにとどまっているからである.また,述部の数を2と3に制限したのは,重文,複文と言えども,現実の文では,4個以上の述部を持つ文全体が非線形であることは少なく,そのような文は,述部2または3の文型パターンに分解して翻訳できる可能性が高いと考えられるためである.