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はじめに

機械翻訳には様々な手法がある.現在,研究活動に広く利用されている手法として統計翻訳のMoses[9]が挙げられる.Mosesは対訳文から言語モデルと翻訳モデルを統計的に学習する.この2つのモデルを利用して,原言語文を目的言語に翻訳する.言語モデルは人間には理解に難しい統計数値の集合である.また,この統計数値は膨大な対訳文から作成されている.このため,翻訳に誤りが生じた場合,細かく原因を探索するのは困難である.

また,古瀬らは,``経験的知識を活用する変換主導型機械翻訳[6]"を提案した.この手法は対訳文から得た経験的知識をもとに人手で作成した変換知識を利用して翻訳を行う.入力文に変換知識に基づいた変換を繰り返して翻訳を行う.このため,翻訳の手順が詳しく解析できる.翻訳に誤りが生じた場合,手順をたどることで誤りの原因を解析することができる.しかし,変換知識は人手で作成されるため,開発コストは高い.

そこで,``相対的意味論に基づく変換主導型統計機械翻訳:Transfer Driven Statistical Machine Translation[1]"(以下,TDSMT)を提案する. TDSMTでは,相対的意味論[5]を利用して,対訳文から「ABならばCD」で表現する変換テーブルを自動作成する.入力文を変換テーブルを利用して変換し翻訳を行う.入力文を変換し,翻訳を行うことで文法を順守した翻訳文が期待できる.変換の手順も明確に探索できるため,誤りの原因を解析することも容易である.さらに,変換テーブルは自動で作成されるため,開発コストも低い.

この論文の第2章では,この研究に必要な先行研究を紹介する.第3章では,提案手法である``相対的意味論に基づく変換主導型統計機械翻訳[1]"の手順や理論を説明する.第4章では,実験データやどのような評価を行ったかを示す.第5章では,第4章で示した評価の結果を示す.第6章では,TDSMTの利点や誤りの解析を紹介する.第7章で,この研究全体をまとめる.



Hiroto Yasuba 2019-05-08