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省略要素の補完における先行研究

中岩ら[13],[14],[15],[2]は,ゼロ代名詞(日本語において省略されている格要素)の解析を行い,ゼロ代名詞照応解析の方法を提案した.まずゼロ代名詞の解析について,日英機械翻訳システム評価用例文3,718文を解析した結果,照応解析を要するゼロ代名詞が484文,510箇所存在することを示した.そして,ゼロ代名詞510件のうち,そこに補完すべき指示対象が文内に存在する場合が139件,文外に存在する場合が371件存在すると報告した.また,ゼロ代名詞の照応解析方法として,文内照応,文間照応,文章外照応の3タイプを提案した.文内照応は,ゼロ代名詞と補完すべき指示対象が同じ文内に存在する場合,同じ文内の指示対象を補完する方法である.例を表3.1に示す.


表: 文内照応の例
ゼロ代名詞を含む文 彼は方程式を解いて答えを出した。
文内照応解析による補完結果 彼は方程式を解いて(彼が)答えを出した。

この文内照応は,助詞の種類や,接続語・用言意味属性・様相表現による制約を用い,照応解析を行う.この文内照応解析では,再現率98%,適合率100%の精度で正しい指示対象の決定を報告した.
文間照応解析は,新聞記事文のような複数文からなる文章において,ゼロ代名詞が現れる文とは異なる文中に存在する補完すべき指示対象を利用し,照応解析を行う方法である.この文間照応解析では,ゼロ代名詞の84%に対して照応解析の成功を報告した.
文章外照応は,文章中に補完すべき指示対象が現れない場合の照応解析方法である.この文章外照応では,格への意味的制約・用言意味属性・様相表現・接続語などを考慮したルールを構築し,ゼロ代名詞の指示対象を推定する方法である.この文章外照応解析の結果,ルールを53種類用いた場合,193文中全ての文において,省略格要素を復元が可能であることを報告した.
中岩らは,問題点としてルール不足を示した.中岩らは,研究において用いたルールのみでは日英機械翻訳において必要十分な解析精度が達成できるわけではないことを報告した.



平成25年2月13日