next up previous contents
次へ: 本研究の目的 上へ: 言語の意味理解 戻る: 情緒推定方法   目次

問題点

先行研究[9]の問題点は,対称な情緒属性をもたないため, 十分には状況の対称性が考慮されていないことである. 対称な情緒属性をもたないことは, 「接近」と「乖離」のどちらも必要な用言(結合価パターン)が存在するが, そのうち,一方の判断条件しか付与されていないこと, もう一方の判断条件に基づく情緒名が付与されていないことを指す.

たとえば,入力文「子供がピーマンを食べる」を情緒推定する場合を考える. 「子供はピーマンが嫌いである」という状況を設定すると,正解情緒は《嫌だ》と予測される.

この文には,図2.3のパターンがマッチし, 情緒属性を得る.

図: 状況の対称性が考慮されていないレコード例
\begin{figure}\centering
\fbox{
\begin{tabular}{l}
日本語文型パターン:$N$1が$N$2...
...ぁ表\
セ霆鐚$N$1 情緒対象:$N$2 \\
\end{tabular}}
\end{tabular}}\end{figure}

この状況設定では,「生理・近(子供,ピーマン)」は偽であり, 《なし》を出力する(情緒の出力を抑制する). 正解情緒である《嫌だ》と一致しないため,不正解となる.

$N$1が$N$2を食べる」は, 生起する情緒が食べる物に依存するため, 「接近」と「乖離」のどちらの判断条件も必要な用言(結合価パターン)である. しかし,判断条件「生理・近」しか付与されておらず, それに基づく情緒名《好ましい》しか付与されていないため, $N$1にとって$N$2が生理に不快である状況も考慮されていない. このように,状況の対称性が考慮されていない用言(結合価パターン)が存在する.



平成25年2月12日