次へ: パターンの運用に関して
上へ: 文末表現に関する分析
戻る: カバー率の男女差
目次
パターンが適合しなかった文で特に目立った文末表現を幾つかピックアップする.
勧誘文のやわらかい口調,および中立の口調で多く使われていた表現である.
「ちびまる子ちゃん」では家族間の会話や友達同士の会話が多く,
敬語が使われる場面が少なかったことが影響していると考えられる.
文末に「だろ」を含む文は批判文のきつい口調で多く見られた.
「だろ」という言葉はどちらかと言えば男性的であり,
女性の台詞が多いコーパスから作成した辞書では
カバーが難しいと考えられる.
文末に「けど」を含む文は批判文のやわらかい口調,および中立の口調で何件か見られた.
「けど」という表現には自分の意見をはっきりと言わないという印象を受けるが,
それが断定的な態度を弱めるために,口調のきつさを緩和させるのに用いられたと考えられる.
また,上記の「だろ」等とは異なり,男女に関係無く使いそうな表現であるが,
「けど」を含むパターンは辞書に少ない.「ちびまる子ちゃん」の
舞台設定により,文末に「けど」を用いることが少なかったためである,と考察する.
このように,辞書でカバーできなかった文の文末表現にも
情緒表現性が強いと感じられるものが多かったため,
適合パターンの有無も表30や
表32の値に大きく影響していると考えられる.
文がパターンに適合しなければ情緒傾向を計ることができないため,
カバー率の向上は今後の大きな課題である.
平成21年3月10日