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実験1:きつさの定量化

勧誘文

適合パターンの情緒成分の平均値と,それを$ \theta $ に換算した値を表30に示す.


表 30: 情緒成分および情緒傾向値$ \theta $ の平均値(勧誘文・書き手の解釈別)
口調 《P》 《N》 《A》 《S》 《なし》 $ \theta $
やわらかい 73.6% 5.5% 7.6% 6.4% 3.1% 58
中立 77.9% 5.6% 6.5% 2.2% 1.7% 59
きつい 50.3% 9.9% 24.5% 2.9% 7.8% 38
全体 63.7% 6.2% 12.5% 3.5% 4.5% 53

《P》,《N》,《A》,および$ \theta $ において,やわらかい口調と中立の口調に ほとんど差が見られない.むしろ中立の口調の方がやわらかい口調よりも《P》成分が高い. きつい口調でも《P》が一番強いが,他の2つの口調と比べて《P》が弱く,《A》が強い.また,$ \theta $ は《A》側に寄っている.

やわらかい口調と中立の口調に目立った数値的な差が見られなかった原因として,予想した通り,相手を遊びに誘う内容であるため,基本的な傾向として 文章にポジティブな感情が含まれやすい,ということが考えられる.

また,きつい口調の文章の適合パターンとして,【CLV^$ meirei$ 。】(対話行為:〔要求,プラン,非過去,想像〕) というパターンが3件見られたが,動詞命令形であり直感的には《A》が強そうなこのパターンにおいて, 情緒成分は《P》:40%,《P》:7%,《P》:34%,《P》:7%,《P》:7%であった. 表9の傾向からも言えることであるが, パターンの作成元となった対話の内容も,きつい口調で予想外に《P》の値が大きくなったことに関係している.

30では,書き手が込めた口調別に見た場合の情緒的傾向を計測したが,比較のために,表27で読み手が解釈した口調別に見た場合の 情緒的傾向を計測したものを表31に示す.表30と表で31で 大きな違いは無いが,表31の方がきつい口調での《A》の傾向が強いと言える.


表 31: 情緒成分および情緒傾向値$ \theta $ の平均値(勧誘文・読み手の解釈別)
口調 《P》 《N》 《A》 《S》 《なし》 $ \theta $
やわらかい 73.1% 6.2% 8.1% 5.1% 2.4% 58
中立 75.1% 5.2% 7.8% 3.5% 4.0% 58
きつい 46.4% 10.9% 27.6% 2.9% 7.8% 32
全体 63.7% 6.2% 12.5% 3.5% 4.5% 53

批判文

適合パターンの情緒成分の平均値と,それを$ \theta $ に換算した値を表32に示す.


表 32: 情緒成分および情緒傾向値$ \theta $ の平均値(批判文・書き手の解釈別)
口調 《P》 《N》 《A》 《S》 《なし》 $ \theta $
やわらかい 51.6% 16.8% 17.8% 3.7% 6.0% 58
中立 44.7% 22.3% 22.5% 3.7% 3.6% 59
きつい 34.7% 12.1% 26.9% 7.1% 13.6% 21
全体 42.7% 17.2% 22.9% 5.0% 7.9% 47

《P》はきつい口調で最も弱く,逆に《A》はきつい口調で最も強い. しかし,そのきつい口調においても最も強いのは《P》成分である. 勧誘文と同様に,やわらかい口調ときつい口調の$ \theta $ にほとんど 差が無いが,この2つの口調の$ \theta $ ときつい口調の$ \theta $ の 開きが,勧誘文の場合よりも大きい.

また,きつい口調において《なし》が強いという点も目を引く. 何故なら,《なし》が強いということは, きつい口調は情緒の無い冷めた口調でもある,と解釈できるからである.

32では,書き手が込めた口調別に見た場合の情緒 的傾向を計測したが,比較のために,表28で読み手が解釈した口調別に見た場合の 情緒的傾向を計測したものを表33に示す.表32と表で33で 大きな違いは無いが,表33の方がきつい口調での《A》 の傾向が弱いと言える.


表 33: 情緒成分および情緒傾向値$ \theta $ の平均値(勧誘文・読み手の解釈別)
口調 《P》 《N》 《A》 《S》 《なし》 $ \theta $
やわらかい 47.4% 18.8% 19.8% 4.6% 3.5% 58
中立 44.6% 20.4% 22.1% 3.2% 5.1% 56
きつい 38.8% 12.8% 26.5% 7.1% 14.5% 28
全体 42.7% 17.2% 22.9% 5.0% 7.9% 47

実験1全体の考察を行う. 勧誘文,批判文ともに,きつい口調の$ \theta $ は他の2つの口調の $ \theta $ と比べて明確に異なることが分かった. やわらかい口調と中立の口調の$ \theta $ に差が無いが, 表31,および,表33 から分かるように,人間でもやわらかい口調と中立の口調の区別が 難しいことが分かる.よって,やわらかい口調と中立の口調の $ \theta $ にほとんど差が無いのは妥当であると言える. また,きつい口調の$ \theta $ と他の2つの口調の$ \theta $ の開きは 勧誘文よりも批判文の方が大きいが,表31と 表33で批判文の方がきつい口調において 書き手と読み手の解釈が一致しやすいことを考慮すると, $ \theta $ の開きに違いが表れたのも妥当であると言える.


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平成21年3月10日