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実験2:きつさ判定への応用

実験1の結果において,勧誘文も批判文も 文集合全体の情緒的傾向ときつい口調の情緒的傾向を比較した場合, きつい口調の方が《P》が弱く,《A》が強いという特徴が見られた. また,$ \theta $ はきつい口調の方が《A》側に寄っているという特徴が見られた.

そこで,きつい口調の文章は,そういった特徴をもつパターン に適合する文を含むと仮定し,《P》と《A》を判定基準として用いた場合, および,$ \theta $ を判定基準として用いた場合について, 口調のきつさ判定が行えるかどうか,実験を行う.

評価指標として,適合率と再現率を用いる. 適合率と再現率の算出式は次の通りである.

$\displaystyle 適合率 = \frac{正しく判定できた文章の数}{判定できた文章の数}
$

$\displaystyle 再現率 = \frac{正しく判定できた文章の数}{文章全体の数}
$

《P》と《A》を用いた場合

勧誘文・批判文それぞれのメール文章全体の情緒成分の平均値 (表30,表32参照) をベースラインとする. そして,以下の2つの条件を満たすパターンに適合する文 を1文でも含む文章を「きつい」と判定する. 条件を満たすパターンに適合する文を含まない文章は「きつくない」, パターンに適合する文を全く含まない文章は「判定不可」とする.

勧誘文に対するきつさ判定の結果を表34に, 批判文に対するきつさ判定の結果を表35に, 適合率と再現率を表36に示す.


表 34: 《P》と《A》を用いたきつさ判定の結果(勧誘文)
口調判定結果 きつい きつくない 判定不可
やわらかい 6 17 9
中立 3 18 11
きつい 14 11 7


表 35: 《P》と《A》を用いたきつさ判定の結果(批判文)
口調判定結果 きつい きつくない 判定不可
やわらかい 4 13 15
中立 11 14 7
きつい 12 11 9


表 36: 《P》と《A》を用いたきつさ判定の適合率と再現率
  勧誘文 批判文
適合率 71%(49/69) 60%(39/65)
再現率 51%(49/96) 41%(39/96)

$ \theta $ を用いた場合

勧誘文・批判文それぞれのメール文章全体の情緒成分の平均値 (表30,表32参照)をベースラインとする. そして,以下の条件を満たすパターンに適合する文を1文でも含む文章を「きつい」と判定する. 条件を満たすパターンに適合する文を含まない文章は「きつくない」,パターンに適合する文を全く含まない文章は「判定不可」とする.

勧誘文に対するきつさ判定の結果を表37に, 批判文に対するきつさ判定の結果を表38に, 適合率と再現率を表39に示す.


表 37: $ \theta $ を用いたきつさ判定の結果(勧誘文)
口調判定結果 きつい きつくない 判定不可
やわらかい 4 19 9
中立 3 18 11
きつい 13 12 7


表 38: $ \theta $ を用いたきつさ判定の結果(批判文)
口調判定結果 きつい きつくない 判定不可
やわらかい 9 8 15
中立 14 11 7
きつい 18 5 9


表 39: $ \theta $ を用いたきつさ判定の適合率と再現率
  勧誘文 批判文
適合率 72%(50/69) 57%(37/65)
再現率 52%(50/96) 39%(37/96)

適合率と再現率のみに着目して考えると, 《P》と《A》を用いた場合は 批判文文に対する判定結果がわずかに高く, $ \theta $ を用いた場合は 勧誘文に対する判定結果がわずかに高い結果となったが, いずれの方法を用いた場合も,ほとんど違いは無かった.

ただし,判定結果の内訳を見ると, きつい口調の文章を「きつい」と判定した件数では, $ \theta $ を用いた方が若干上回っている.


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平成21年3月10日