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英語文の部分的な構造の決定

英語文の部分的な構造は,英語パターン中の記号で定義されており,基本的に は入力日本語文と日本語パターンの照合結果により記号の処理が決まる.記号 は,構造上の線型性を記述するために使用されている.記号を分類すると,(1)OR条件 による線形要素の適用範囲の拡大のための記号,(2)線形要素の挿入や省略のた めの記号,に分類できる.英語パターンで使用される記号を表7に示 す.表7の(1),(2)は前述した記号の分類の種類である.

表 7: 英語パターンで使用される記号
分類 記号名 書式 機能説明
(1) 要素選択 (パターン記述1| 複数記述された要素のいずれか
  記号 パターン記述2|$\cdots$) を使用
  対応型 #数(パターン記述1| 日英での要素の対応関係を保っ
  要素 パターン記述2|$\cdots$) たまま対応する順序で日英での
  選択記号   要素を指定
  訳出要素 #数<パターン記述1| 日本語文型パター ンで左側のパ
  選択記号 パターン記述2> ターン記述に対応する要素が適
      合しなかった場合右側のパター
      ン記述を使用
  標準形 `用言の標準形' 字面部分の標準形を指定
  表記記号    
(2) 任意要素 #数[$\cdots$] 日本語文型パターンで適合する
  記号   要素がある場合のみ訳出の対象
  要素挿入 #1{挿入要素} 英語側の要素の中に副詞等の別
  記号   の要素を挿入し訳出

それぞれの記号について,具体例を以下に示す.
(1)OR条件による線形要素の適用範囲の拡大のための記号
要素選択記号

要素選択記号は,複数の選択要素を表す記号である.以下に使用例とその説 明を記述する.
英語パターン:It is (a|an) #1[$AJ4$] $N5$ that $N1$ be $AJ2$.

下線部が要素選択記号を用いて記述された部分を示す.(a|an)の部 分は後ろに続く名詞によって,``a'',``an''のうち適切な方を使用する.本研 究では,後述するワードグラフに直接展開する.
対応型要素選択記号

対応型要素選択記号は,日英での要素の対応関係を保ったまま,対応する順 序で日英での要素を指定する記号である.必ず,日英セットで使用する.以 下に使用例とその説明を記述する.
日本語パターン:$NP1$$AJ2$(て|で) $AJP3$#4($.genzai$|$.kako$)
英語パターン:$NP1$ `are'#4(^$present$|^$past$) $AJ2$ and $AJP3$.

下線部が対応型要素選択記号であり,指定された順序で対応して使用する. 日本語が$.genzai$に適合した場合は英語側では^$present$を使用し, 日本語が$.kako$に適合した場合は英語側では^$past$を使用する.
訳出要素選択記号

訳出要素選択記号は,文型パターン作成の際使用した原文で,主語が英文にあっ て日本文にはない場合のために,主語を補う記号である.照合ではその要素が 入力日本文にあっ てもなくてもよいとしているため,照合で適合するか否かにより英語側で の処理が決まる.以下に使用例とその説明を記述する.
英語パターン: <$N1$|I> never $V4$^$past$ $NP2$ to be so $AJ3$.

下線部が訳出要素選択記号を用いて記述された部分を示す.照合で$N1$に適合 する日本語要素があるなら$N1$を,なければ``I''を選択する.
標準形表記記号

標準形表記記号は,字面部分の標準形を指定する記号であり,様相時制の任 意化をする際に使用するため,標準形表記記号の直後には必ず対応型要素選択 記号が付属する.標準形表記記号には構造を決める意味はなく,直後の対応型 要素選択記号により構造が決定する.以下に使用例とその説明を記述する.
英語パターン:There `is'#4(^$present$|^$past$) no $N3$ of $N1$^$poss$ $V$($V2$|$ND2$)^$grn$.

下線部が標準形表記記号を用いて記述された要素を示し,標準形が``is''で あることを示す.
(2)線形要素の挿入や省略のための記号
任意要素記号

任意要素は照合の際にあってもなくてもよい要素を表す記号である.照合で適合する 日本語要素が存在する場合のみに訳出を行う.以下に使用例とその説明を記 述する.
英語パターン:There is #3[$ADV4$] $AJ5$ $N6$ between $N2$ and $ADV(N1)$.

下線部が任意要素記号を用いて記述された部分を示す.照合で$ADV4$に適合 する日本語要素がある場合のみ訳出を行う.
要素挿入記号

要素挿入記号は,英語側の要素の中に副詞等の別の要素を挿入して訳出する記 号であり,変数の後ろに付属して使用する.以下に使用例とその説明を記 述する.
日本語パターン:$N1$$ADV2$ $AJ3$^$rentai$ $N4$$V5.kako$ (中|仲|なからい)だ。
英語パターン:$N1$ $V5$^$prp$#6{$ADV2$} $AJ3$ $N4$ together.
照合する日本文:われわれはみな同じ道を歩いた中だ。
訳出英文例:We have all walked the same path together.

英語パターンの下線部が要素挿入記号を用いて記述された部分を示す.$V5$ の訳出結果に$ADV2$を挿入して訳出する.$V5$の訳語である``have walked''に 要素挿入記号で指定された$ADV2$の訳語である``all''を挿入して、``have all walked''を訳出する.


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平成19年3月16日