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時間関係の表現形式

本稿では,文が表す時間関係をReichenbach[4]によって導入さ れた,S(発話時),E(事象時), R(参照時)の3つの時点の関係として表す.S(発話時)とは,発話が与えられた時 点であり, E(事象時)は,事象が発生した時点である.R(参照時)とは事象を捉えている基準 時点である.以下に例文を挙げる.

 \begin{displaymath}\ \ \ \ \ \ 私は家まで走った.
\end{displaymath} (4)

[*]では,「走った」という過去の事象をその時点までさかのぼって捉えている. そのため,E(事象時)とR(参照時)は,一致しており、S(発話時)以前に位置する.つま り,時間関係は,次の図のようになる.

  
Figure 2: S(発話時),E(事象時),R(参照時)の時間関係
\includegraphics[clip,scale=0.8]{reichen.eps}

同時関係を「=」,順序関係を「→」で表すと,図2は,以下のように表せる.
E=R→S
以降では上記の表現形式を用いることにする.

 \begin{displaymath}\ \ \ \ \ \ 私は彼と走っている.
\end{displaymath} (5)

[*]の「走っている」のように事象が動作の継続を表す場合には、事象時EをE(P)とする. つまり,[*]では,現在進行中の動作を発話時から捉えてい るため,E(P)とR,Sは,一致し次のようになる.
E(P)=R=S

 \begin{displaymath}\ \ \ \ \ \ 列車が着いている.
\end{displaymath} (6)

[*]では,発話時以前に完了した「着いた」という 事象の結果を発話時から捉えている.よって時間関係は,以下のようになる.
E→R=S

以上の表現形式において,S(発話時)とE(事象時)は,直接関係しておらず,R(参 照時)を介して関係を持っている.つまり,S→E→RS=E→Rの間に 違いはないものとする.



2002-03-07