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はじめに

従来の日英機械翻訳においては,時間表現の意味のずれが翻 訳品質を低下させる原因の一つとなっている. 時間表現が表す概念には,事象の時間的位 置を表すテンス,動作や状態の時間的な局面を表すアスペクトなどのカテゴリー がある.これを言語表現から見た場合,例えば,日本語では,同じ表現で過去と完了 を表すのに対して、英語では,過去と完了では,異なる表現を用いており、 両言語間でずれが生じている.

時間表現の解析によって,客観的な意味を捉える研究には,日本語動詞の時間的性 質を素性によって図式化 しアスペクト解析を行ったもの[1][2],また,数量表現を含む名詞句の時間表現を, 意味によって分類し,形式表現に変換するアルゴリズムを提案したもの [3]などがある.しかし,これらの研究は日本語側から時間表現を 解析したものであり,機械翻訳を対象とはしていない.

従来の機械翻訳における時間表現の翻訳では、表層上の対応関係から作成された 翻訳規則が用いられていた.しかし,言語表現上の違いを克服するためには、表 層上の関係を規則化するのではなく、原言語から客観的な時間関係を抽出し,そ れを目的言語の枠組みの中で捉え直す仕組みが必要である.

そこで,本稿では,動詞と時間副詞の時間的性質を手がかりに、日本語時間表現 から言語に依存しない中間表 現を介して英語への翻訳を行う方法を提案する.

本手法の精度評価のために,対訳データベースを用いて実験し,一意正解率 73.2%,複数選択正解を含め ると87.0%という結果を得た.また,本手法と市販の翻訳ソフトとの精度比較実験 を行った結果,本手法の精度が16%程度上回った.

以下,2章では,時間表現の説明,3章では時間表現の翻訳手順,4章では,本稿 で用いる時間関係の表現形式について述べる.また,5章では日本語時間表現の 解析,6章では時間表現の翻訳、7章で時間表現の制約について述べ、8章では, 複文における時間表現について検討する.9章では評価実験を行い、10章で考察、11章 で,今回の結論を述べる.



2002-03-07