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結合価パターン

用法に依存した英語時間表現を正しく翻訳するためには, 前もって用法を知っておく必要がある. そこで,本稿では,結合価パターン[5]を用いて用法の推定を行い,得られた 情報をもとに英語時間表現を修正する.以下に進行形に関する制約条 件の説明をする.

結合価パターンは,名詞と用言の関係を記 述したものであり,文法的,意味的な情報を含んでいる.本稿では,日本語語彙 大系[5]に掲載されている「構文意味辞書」の結合価パターンを使用する.一般の文 型と慣用的表現の文型をあわせて約14,800件の日本語文型パターンにまとめられ ている.以下の表8に結合価パターンの例を示す.

   
Table 8: 結合価パターンの例
属性変化(動作 N1(962 機械)が
受け身不可) N2(*)で/から疲れる
  N1 be fatigued with N2
身体変化(状態 N1(4 人 535 動物)が
受け身不可) N2(*) で疲れる
  N1 get tired of N2
属性(状態 N1(4 人 535 動物)が
受け身不可) N2(*)で/に 疲れる ている
  N1 be tired from N2


結合価パターンには,意味属性と,その用言が持つ日本語の文型パターンを示 し,対応する英語の文型パターンが記載されている. 意味属性の右側には,変形情報が``()''で囲って示してあ る.変形情報とは,英語の文型パターンが進行形,受け身形に変形しうるのかを示している. (動作)が進行形可,(状態)が進行形不可を表す.また,特定の助動詞をともなっ て英語の文型パターンが変化する場合には,助動詞を小書きにして後ろに付記し てある.

この結合価パターンでは,格要素の名詞の代わりに一般名詞意味属性で記述されて いる.一般名詞意味属性体系の概略図を図3に示す.


  
Figure 3: 一般名詞意味属性体系
\includegraphics[clip,scale=0.8]{zu2.eps}

一般名詞意 味属性とは,名詞の意味的用法を整理,体系化したシソーラスである. 本論文で使用する一般名詞意味属性体系は、約40万語の名詞を、最大12段の木構造を構成する2,710の意味属性に分類されている。

 また、一般名詞意味属性体系は、木構造を基本構成としているため、上位の意 味属性の性質を、下位の意味属性の性質に伝搬・継承できるという性質があ る。この性質により、下位の意味属性を定義するための記述量を減らしている。 結合価パターンは、この上位下位の関係を利用してパターンの照合を行う。

なお,結合価パターンの選択には,格要素が最も多く一致したパターンを選択する.



2002-03-07