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考察

表1に示す日本語複文の分類で、英語表現対応に失敗した例を調べた結果、 おおまかに以下に示す4つに分類できた。
(1)
英語の単語に対応する日本語複文
表3に示す、例「私は見知らぬ から声を掛けられた。→ A stranger called out to me.」 のように、日本語の文「見知らぬ人」が、英語では「A stranger」と単語で表現される日本語複文がこれにあたる。 このような日本語複文については、データ登録により英語表現を決定できる。

(2)
英語構造「節」と「句」に分類することが困難である日本語複文
表4に示す、「本章は 背景とこれに続く 問題点 から構成される。→ This chapter consists of the background and the problems that follow. 」 などがこれにあたる。 この場合、修飾部の陳述度が「〜続く」→1.a(1)で、英語表現「句」に 訳されると提案したのだが、機能試験文では「節」で訳されている。 対象データの大半は、 陳述度1.a(1)では英語の「節」に訳されると、分類に成功したのだが、このように失敗例が 挙げられたことから、 陳述度のみで、 英語の「節」と「句」を決定するには、精度上限界があると思われる。

(3)
英訳において文の組み立てが変わる日本語複文
表5に示す、例「一月に売れる電話器は10セットです。→10 sets of telephone equipment will be available for sale in January.」 がこれにあたる。 この場合、英語では「電話器の10セットが一月に売れるであろう。」と単文で表現されており、 この英文構造を考慮して英語表現を決定することは、提案した分類のみでは不可能である。

(4)
英訳において話し手の伝達意志が必要となる日本語複文
これは、機能試験文では、次に示す1件しか出現しなかったのだが、翻訳において、精度を下げる重要な 要因となると思われたので取り上げた。 「これが、 私たちがよくその木陰にすわったです。→This is the tree in the shade of which we would often sit. (→This is the tree where we used often to sit in the shade.)」 この場合、話し手の伝達意志により両者の英語表現は使い分けされることになる。 前者では、「私たちがよくその木陰にすわった」と「木」が所有関係を示しているのに対し、後者は場所の「デ」格 を示している。 話し手がどちらの意志を伝えようとしているのか、1文からその情報を取り出すのは困難であり、 前後の文との相関関係からの推測など、情報を増やすことが必要と思われる。



MatobaKazuyuki 平成11年4月23日