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「言う」「話す」

(正解例1)
2歳の私はね、まるで家畜を運ぶような引き揚げ列車の中で『おうちに帰ろ』って言うんですって。
(正解例2)
時代と芸術の価値判断への興味と、絵とゴッホへの興味ですね」と出演のきっかけを話す
(誤り例1)
スラスラと話すべき役なんですが、彼はリズム感をはずしトツトツと言う(話す)。
(誤り例2)
子どもが発言の機会を与えられているが、自分の意見を話す(言う)機会がない場合。

5.7に類義語の組「言う」「話す」の機械学習の分類結果を示す. 表5.8に類義語の組「言う」「話す」の有意差検定に基づいた機械学習が参考にした素性を示す. 表5.9に類義語の組「言う」「話す」の正規化α値に基づいた機械学習が参考にした素性を示す.




表 5.7: 機械学習の分類結果(「言う」「話す」)
  データ数 再現率 適合率 F値
言う 5000 0.74 0.78 0.76
話す 5000 0.79 0.75 0.77
総数 10000 0.77 0.77 0.77




表 5.8: 機械学習が参考にした素性(有意差検定:「言う」「話す」)
言う 話す        
素性  頻度(p値) 素性  頻度(p値)      
素性2:べき(直後) 131 素性13:語  35      
( $ 3.67\times10^{-40}$ )    ( $ 7.55\times10^{-6}$ )      
素性2:って(直前) 41 素性2:について(直前)  26      
( $ 4.55\times10^{-13}$ )    ( $ 7.62\times10^{-6}$ )      
素性2:通り(直後) 48 素性2:機会(直後)  20      
( $ 9.84\times10^{-12}$ )    ( $ 1.05\times10^{-5}$ )      
素性1:文句 26 素性13:体験  17      
( $ 1.49\times10^{-8}$ )    ( $ 3.64\times10^{-4}$ )      
素性2:ものの(直後) 18 素性13:きっかけ  10      
( $ 3.81\times10^{-5}$ )    ( $ 5.86\times10^{-3}$ )      




表 5.9: 機械学習が参考にした素性(正規化α値:「言う」「話す」)
言う 話す
素性 正規化 $ \alpha $ 素性 正規化 $ \alpha $
素性2:』(2語前) 0.85 素性1:効果 0.83
素性1:誇り 0.80 素性2:」(2語前) 0.82
素性1:舞台 0.79 素性2:について(直前) 0.81
素性1:自ら 0.75 素性1:将来 0.80
デフォルト素性 0.58 素性1:当時 0.77

「言う」は「言うべき」「〜って言う」「言う通り」「言うものの」といった表現がよく使われる.「話す」は「〜語を話す」「〜について話す」「話す機会」のような表現が多い. 「言う」は「文句を言う」など日常的な会話を表す文章に使われやすく,「話す」は「体験」「きっかけ」「将来」のことなどを口にする時に使われる.デフォルト素性は「言う」の方が高いため,「言う」の方が広義の意味で使われやすいとわかる.

また,文献[5]によると以下のように書かれている.

 思うことを口にして表現する.「言う」は,思ったことを言葉で表現する意だが,まとまった内容を表現する場合だけではなく,反射的に小さな叫び声を上げるような場合や文章表現などにも用いられ,広い用法をもつ語.「話す」は,相手と会話をするという意もある.

文献[5]と素性分析の結果を比較し同じ結果となったことを以下に示す.「言う」は,広い用法をもつ語,「話す」は「〜語を話す」や「体験を話す」など,相手と会話をするという意もある,という点は同じだった.

文献に載っておらず,素性分析から新たにわかったことを以下に示す.「言うべき」「言う通り」「話す機会」のようによく使われる用法が素性分析から新たにわかった.

文献に載っているが素性分析から得られなかったことを以下に示す.反射的に小さな叫び声を上げるような「言う」の表現は素性分析からはわからなかった.


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root 2018-02-28