表5.4に類義語の組「場合」「時」「際」の機械学習の分類結果を示す. 表5.5に類義語の組「場合」「時」「際」の有意差検定に基づいた機械学習が参考にした素性を示す. 表5.6に類義語の組「場合」「時」「際」の正規化α値に基づいた機械学習が参考にした素性を示す.
データ数 | 再現率 | 適合率 | F値 | |
場合 | 4000 | 0.74 | 0.76 | 0.75 |
時 | 4000 | 0.74 | 0.75 | 0.75 |
際 | 4000 | 0.74 | 0.72 | 0.73 |
総数 | 12000 | 0.74 | 0.74 | 0.74 |
「場合」は「場合による」「〜場合がある」のような表現が多く,「時」は「〜時から」や「〜時。」のように文末で使われる表現などが多く,また「際」は「〜する際、」「〜際に」のような表現が多かった.「場合」は「ない場合」「以上の場合」など物事の状態や条件を表す語と併せて使われやすい.特に,「以上」「%」「万」などの数量的な条件を表す語と共起しやすい.また,「〜さんの場合」など人物が前にくることも多い.一方,「際」は「昨年」「先月」などの具体的な時を表す語と共起しやすいことから出来事が起きた時点を表す文で使われることがわかった.「時」は「〜歳の時」のように具体的な人物の過去の話や「あの時」「そんな時」のように抽象的な時点を表す文によく使われる.また,「際」は「時」に比べ,「訪日」「有事」など堅苦しい文章に使われることが多い.デフォルト素性の正規化 値は分類先「時」でかなり高かったため,「時」は「場合」「際」よりも一般的に使われやすいことがわかる.
また,文献[5]によると以下のように書かれている.
いずれも, 動作状態を表す修飾語句を受けて用いられる. 「場合」は「時」と比べると, その物事, 状態が発生する具体的, 個別的な状態を指すことが多い.「際」は何かが行われる時間を予期した文脈で用いられることが多い.
文献[5]と素性分析の結果を比較し同じ結果となったことを以下に示す.「場合」は「ない場合」「以上の場合」などの物事, 状態が発生する具体的, 個別的な状態を指すことが多く,「際」は「最近の訪日の際」などのように何かが行われる時間を表す文脈で用いられることが多いという点が同じであった.
文献に載っておらず,素性分析から新たにわかったことを以下に示す.「訪問」「訪日」など,訪れる時点を表す表現には「際」が使われ,「〜歳の時」「〜年生の時」のように人物に関する時期を表すものや「あの時」「その時」など抽象的な時点を表す表現には「時」が使われるというようなことが新たにわかった.
文献に載っているが素性分析から得られなかったことはなかった.