TDSMTは翻訳の手順を詳しく解析することが可能である.翻訳の手順を詳しく解析することによって,誤りの原因をしることができる.誤りの原因をふまえた改善法を提案することにより,効率の良い発展が期待できる.この発展性がTDSMTの利点である.
第II部では,TDSMTにおいて,未知語を出力する手法を提案した.低いカバー率の原因は対訳文中に存在しない語や,対訳文中に出現する頻度が低く,学習が困難である語(未知語)が入力文中に出現した場合,翻訳不可能になってしまうことである.この問題を解決するために,未知語を出力文中に出力する手法を提案した.未知語出力用変換テーブルの自動作成手法を利用することにより,未知語出力用変換テーブルは大量に作成された.この結果,翻訳に利用する変換テーブルの数は10倍程度まで増加した.このため,提案手法は従来のTDSMTよりも多くの計算空間と計算時間を要する.しかし,未知語を出力することによって,カバー率は60% 程度まで増加した.
また,Mosesと翻訳精度の比較を行った.人手評価では,提案手法はmosesよりも翻訳精度が高い.これは,学習の難しい語を少ない情報から翻訳するよりも,未知語として出力することで,文法を維持した翻訳文を生成することができると考えられる.
本実験において,新しい手法である``相対的意味論に基づく変換主導型統計機械翻訳"を提案し,未知語を出力可能にして,カバー率と翻訳精度を向上させた.しかし,カバー率と翻訳精度はまだまだ低い.このため,出力文の解析と改善法の提案を行う必要がある.