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目次
表6.2より,未知語の翻訳精度は約50%であり,表6.5より,文全体の翻訳精度は約20%であることが分かった.これらの結果より,未知語の翻訳精度と文全体の翻訳精度に差が生じていることが分かる.この主な原因として,ベースライン(未知語処理前の文)の翻訳精度が考えられる.提案手法は,一度生成された出力文に対する後処理の形で未知語処理を行っている.そのため,未知語処理前の文の翻訳精度に大きく左右される.したがって,ベースラインの翻訳精度が低い場合には,未知語が正しく翻訳できたとしても文全体の翻訳精度に影響しなかったと考えられる.この具体例として,表6.9と表6.10の評価例が挙げられる.表6.9と表6.10は,どちらも未知語の翻訳は正しくできているが,未知語部分以外の翻訳精度が低く意味が読み取れない状態であるため,最終的に文全体を通しても入力文の意味が読み取れない結果となった.さらに,表6.2の未知語の翻訳精度が100%だと仮定して人手評価を行った場合でも,表6.5の文全体の翻訳精度は約35%までしか向上しない.ここで,未知語の翻訳精度が100%だと仮定した場合に翻訳精度が向上する出力文と向上しない出力文の例を表7.2と表7.3に示す.表7.2では,``冷夏"という未知語が誤った翻訳となっているが,仮に``cool summer"に正しく翻訳された場合には文全体の翻訳精度が向上することが分かる.また,表7.3では,``省ける"という未知語が誤った翻訳となっているが,仮に``save"に正しく翻訳されたとしても文全体の翻訳精度が向上しないことが分かる.
表 7.2:
仮に未知語の翻訳精度が100%の場合に翻訳精度が向上する例
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表 7.3:
仮に未知語の翻訳精度が100%の場合でも翻訳精度が向上しない例
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以上のことから,ベースラインの翻訳精度が向上した場合には提案手法の効果がより現れると考えられる.したがって,今後,提案手法において文全体の翻訳精度を向上させるためには,まずベースラインの翻訳精度を向上させなければならないと考える.
s122019
2018-02-15