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属性叙述型

範疇叙述型では述語名詞の主要部が範疇的概念を表す語である場合を見たが, 次のような事例では述語は主語が表す事物の帰属する範疇を表しているわけではなく, 味,色,図柄,材質,数量,価格などの属性的概念を表している. 今田は以下の例文を示した.
(5)
偽造投票用紙は本物と同じ薄い緑色だが、紙がやや薄めで朱色で印刷された文字や公印が不鮮明。
(6)
日本の海運会社が運航している外航貨物船はおよそ二千隻である。

[
|]引用 名詞述語文によって叙述される属性の種類は多様であり,それらをどのよう に整理するかは課題である.

構文的特徴についてもう少し詳しく区別すると,属性を表す述語名詞 句の主要部は,属性の種類を表す場合と,値を表す場合がある. コンピュータ・データベースなどで用いられる EAV モデルというデータモデルで記述すると,これらの 文の意味構造は表% latex2html id marker 662
$\ref{one}$のように記述することができ,属性または値のいずれか が述語名詞句の主要部になっているということになる.

実体,属性,値の三項の現れ方には,いくつかのパターンがある.代表的な ものとしては,表% latex2html id marker 664
$\ref{two}$のような構文が考えられる.E+A/V 型の構文においては, 主語は実体ではなく属性にシフトしており,文全体は後述する外延叙述型の構 文(いわゆる役割 - 値文)にシフトしている.

一般的にいえば,範疇叙述型の文が主語(対象)と述語(範疇)の二項関係である のに対して,属性叙述型の文はEAVモデルで構造化されるような三項関係で 記述することができる.

以上に対し,本研究では次のようにエッセンスを取り出す. 属性叙述型は,主語が実体を表し,述語がその属性となる.また, 追加の情報を示す語句は値となるが,述語が属性および値となる場合もある. 解析で実体,属性,値が得られる.

[
|]属性叙述型の例 原文:このカレーは $300円$ だ。
実体:カレー
属性:$300円$(価格)
値:$300円$



表: EAVモデルを用いた属性名詞述語文の意味構造
実体(Entity) 属性(Attribute) 値(Value)
偽造投票用紙 緑色
外航貨物船 数量 二千隻



表: EAVモデルに基づく構文類型
構文
E/V+A [$_{\rm E}$ 東京タワー]は[$_{\rm V}$ 333m]の[$_{\rm A}$ 高さ]だ.
E+A/V [$_{\rm E}$ 東京タワー]の[$_{\rm V}$ 高さ]は[$_{\rm A}$ 333m]だ.
E/A/V [$_{\rm E}$ 東京タワー]は[$_{\rm V}$ 高さ]が[$_{\rm A}$ 333m]だ.
E/A [$_{\rm E}$ 東京タワー]は[$_{\rm A}$ 333m]だ.



平成25年6月20日