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分類7 「文の曖昧性」

以下に誤り事例を示す.

入力文:あの会社は誇大広告で非難された。
出力文:誇大広告で [φが あの会社を 非難する]。
正解文1:(ある団体が)あの会社の誇大広告を非難する。
正解文2:(ある団体が)誇大広告のあの会社を非難する。
正解文3:(ある団体が)あの会社を誇大広告で非難する。

入力文に対し,正解文が二通り考えられる.正解文を出力するには,入力文に対 し,以下の解釈がそれぞれ必要である.

解釈1:あの会社は誇大広告が原因で(ある団体に)非難された。
解釈2:(ある団体が)あの会社の誇大広告を(対象として)非難した。
解釈3:(ある団体が)誇大広告を利用してあの会社を非難した。

常識的には,入力文の文意は解釈1である.常識というのは,入力文の外の知識 を含んでいる.解釈1に限定する処理は常識や文脈をとらえた上での処理であり, 意味理解という範囲である.しかし,パターンに基づく意味解析は,文のもたら す解釈を出力することを処理範囲としているため,解釈1から解釈3まですべて出 力するべきである.これらの解釈を満たすためには,受動パターンの助詞の不足, 格要素の追加など,対策を処理の段階ごとに設け,1つの能動パターンから複数 の受動パターンを作成する必要がある.本研究で作成した変換規則では,1つの能 動パター対して,1つの受動パターンを作成したが,複数の受動パターンが必要 となる場合に対応できていない.これらの問題に対応するために,1つの能動パ ターンに対して複数の受動パターンを用意する必要があることがわかった.



平成22年2月11日