(3a) |
入力文:あの大リーガーの場外ホーマーには度胆を抜かれた。 |
出力文:あの大リーガーの場外ホーマーには [φが 度胆を 抜く]。 |
正解文:あの大リーガーの場外ホーマーが度胆を抜く。 |
以下に使用したパターンを示す.
能動パターン: |
受動パターン: |
意味属性制約: |
使用した受動パターンの変数には,助詞「には」が存在しない.そのため, 名詞句「あの大リーガーの場外ホーマー」が受動パターンの名詞変数に適合 しなかった.入力文を正しく解析するには,受動パターンを「には」と する必要がある.
次に(3a)と性質の異なる助詞の問題を次の事例で考える.
(3b) | 入力文:あの政治家はテロにより命を奪われた。 |
この入力文は次に示す2つの能動文に復元されることが考えられる.
復元例1:(組織が)テロで政治家の命を奪う。 |
復元例2:テロが政治家の命を奪う。 |
復元例1では,入力文に明記されていない「組織」という動作主が「テロ」とい う手段を用いて政治家の命を奪うと解釈できる.一方,復元例2では,「テロ」 という擬人化された主格が政治家の命を奪うと解釈できる. したがって,能動パターンと受動パターンの対として,少なくとも以下のパター ンが必要であり,さらにいくつかの受動パターンを追加しなければならない.
既存パターン |
能動パターン: |
受動パターン: |
意味属性制約: |
追加パターン |
能動パターン: |
受動パターン1: |
受動パターン2: |
受動パターン3: |
受動パターン4: |
意味属性制約: |
表7.1の分類3に該当する入力文を,助詞の追加で意味を正し く解析できるものと,できないものに分類する.助詞の追加だけでは意味を正し く解析できないものとは,助詞の追加により,分類6「格要素の個数の変化」, および,分類7「文の曖昧性」の問題へと転化するものである.
助詞の追加で解析できるもの |
・この文書には最終条件が含まれる。 |
・その件については銘々の判断に任せられた。 |
・その雑誌のクイズにはたくさんの回答が寄せられた。 |
・その事件については裁判所の判断に委ねられた。 |
助詞の追加だけでは解析できないもの |
・あの政治家はテロにより生命を奪われた。 |
・昨日その工場で役人による抜き打ち監査が行われた。 |
・今日の交通ストで約9万人の通勤客が足を奪われた。 |
・その言葉は別の意味にも用いられる。 |
・これは速度の意味で用いられる。 |
・このシステムにより交換機からデータが収集される。 |
太字で強調した助詞は,助詞が受動パターンに存在しなかったものを 表す.本実験では,「により・による・で・には・については・にも」の助詞が 不足していることが分かった.