句パターン辞書の改良において,離散記号の処理について未決定である.本研究 では,日英重文複文文型パターン辞書から句パターンを抽出する際,原パターン の離散記号をそのまま句パターンの離散記号として使用している.原パターンの 離散記号は,文パターンで使用することを目的としているた め,句パターンの離散記号として不適切な可能性がある.離散記号の削除もしく は付替の必要があると思われる.
形容詞句では,日本語パターンにおいて,述語として使われるか連体修飾 語として使われるかで,英語側で動詞句であるか形容詞句であるかの対応が見られ ,大半の日本語パターンが述語表現か連体修飾表現のどちらか であった.全てのサブ辞書で,日本語と英語側で句の種類の違っているパターン が見られ,句の種類が同一のものと比べパターンが大きく異なる事例が多かった.日本語パターンと英語パターンで,句の種類が違う場合の辞書を作成する必要が あると考えられる.
また,動詞句 においては,動詞を自動的に字面化しているが,受身表現や否定表現において, 日英パターン間で対応がとれなくなっているパターンが見られた.図 7.1に受身形の例を示し,図7.2に作成元の日英原文と日英句 レベル文パターンを示す.
図7.2のパターン作成元の日本語原文では,動詞「挟む」の語形は受身 形の「挟まれ」であり,英語原 文の「got caught」がこれに対応している.自動的に日英パターンで動詞を原型に 変換してしまったため,図7.1の日本語パターンの「挟む」と英語パター ンの「get caught」間で対応がとれなくなっている.ここで,図7.2の 日本語パターンを見ると,「VP3.rareru」となっており,動詞句辞書において, 受身形や否定形を含めて対応できるようにするためには,形容詞句,形容動詞句 辞書と同様に,様相関数を 含めた句パターン辞書の作成が必要かもしれない.