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おわりに

本研究では, 文末表現の情緒的傾向を定量的に計測することのできる辞書が 開発されていないという問題に対して, 既存のタグ付きテキスト対話コーパス(約3万文)に 対話行為を表すタグを付与し, 情緒との共起頻度,および,対話行為の情報をもつ 文末表現パターンを1,515件作成し,辞書化した.

評価実験として,メール文章の口調のきつさの定量化を行った. 勧誘文と批判文を, 「やわらかい口調」,「中立の口調」,「きつい口調」の 3種類のきつさの口調で書いてもらい, 文末表現から解釈される情緒的傾向を,本辞書を用いて機械的に計測した. その結果,「やわらかい口調」と「中立の口調」の 情緒傾向値$ \theta $ は58〜59であるのに対し, 「きつい口調」の情緒傾向値$ \theta $ は21〜38と, 明確に差が出ることが分かった. この結果と,同じ文章を人間が読んだ場合の解釈の結果には, 同様の傾向が見られ, 辞書を用いた計測結果の妥当性を確認した. また,本辞書のパターンに文が適合した割合は, 勧誘文で54%,批判文で45%であった.

計測結果の応用として, メール文章が「きつい」か「きつくない」かを機械的に判定する実験を行ったところ, 文がパターンに適合した範囲では,約6〜7割の精度で 正しく判定を行えることが確認できた. 以上より,本研究の目的である, 情緒傾向値付き文末表現パターン辞書の開発を行うことができた.



平成21年3月10日