表3および7より, 文末表現変更の前後で意図が保たれたかどうか考察を行う.
単純一致として見た場合, 平均28問,全体の合計では168問(70%)で意図が保たれており, 半数以上の問題(問題文)で, 文末表現を変更しても多くの被験者で意図が保たれていることが判る.
また,完全一致として見た場合, 平均18問,全体の合計では108問(45%)で意図が保たれており, 制約条件が厳しい所為もあり, 1人の被験者でしか意図が保たれていない問題の多さが目立つ.
完全一致で見た結果があまり良くない原因として, 意図に対する解釈に個人差,特に試験者と被験者との差があったと考えられる. 特に〈質問〉と〈確認〉などは 明確な区別が難しく,どちらの意図とも解釈できる点は否めない. また,各文末表現に意図属性を最大2つまでしか付与していないことが 同一の文末表現の表現しうる意図を狭めてしまったと考えられ, この結果を悪くしてしまった要因の一つではないかと言える. 〈伝達〉以外の発話文が〈伝達〉と回答されているケースが目立った.
一方,単純一致で見た結果は比較的良好であった. この原因についても意図に対する解釈が関係していると考えられる. 文末表現変更前の文に対する解釈が試験者と異なるのだから, 同じ基準で見た文末表現変更後の文に対する解釈も異なり, その結果,読み手(被験者)側からすれば 意図は変化しないのである.
目的の意図が正確に伝わらない点を軽視してよいわけではないが, 文末表現変更の前後で 読み手にとって意図が変化しないことの方が重要であると考え, 単純一致の結果を重視する. よって,文末表現変更の前後で意図が7割保たれたと判断する.