意図属性の付与

文末表現の選択は意図を観点として行う為， 文末表現には意図の情報が必要となる．

文末表現が持つと考えられる意図属性を，2.2節の文末表現に付与する． 意図属性の分類は飯田らの情報伝達行為[7]を参考に， 〈伝達〉，〈質問〉，〈確認〉，〈要求〉， 〈肯定〉，〈否定〉，〈受諾〉，〈拒否〉の8種類とする．

意図の簡単な説明を以下に示す．

伝達

意思・認識・記憶・生理状態などを伝えること．

質問

疑問または理由を問うこと．尋ねること．

確認

相手に同意を求めるなどして，はっきり確かめること．

肯定

同意すること．認めること．基本的に、確認に対しての反応．

否定

打ち消すこと．違うと認識し，認めないこと．肯定同様，確認に対しての反応としても使うが，それ以外の状況でも使う．

要求

相手に行動などをさせること．要請すること．また，自分から行動を申し出ること．禁止も要求のうちに含まれる．

受諾

要求・希望などを引き受けること．承諾．基本的に，要求に対しての反応．

拒否

要求・希望などを承諾せず，拒むこと．基本的に，要求に対しての反応．拒む意思がある．

意図属性は，文末表現を見て判断し，手作業で付与する． 多くの場合，一つの文末表現に様々な意図属性が考えられるので， 特に共起の可能性が高いと考えられる意図属性を 最大2つまで選んで付与するものとする．

付与の様子の例を示す．

• 文末表現「かな…。」に意図属性を付与する場合

  人に何かを尋ねる場合に用いることが多いため，〈質問〉の意図属性が考えられる． しかし，分かっている事を発言する場合にも用いるので 〈伝達〉の意図属性も考えられる． よって，文末表現「かな…。」には意図属性〈質問;伝達〉が付与できる．

なお，意図属性を付与できない文末表現は 以降で用いないものとし，この段階で除外する． 具体的には，「落ち着いてよ。」「頑張れ…。」のように， 発話意図意外に発話の内容を含んでいる文末表現，また， 「よ、まる子。」「お母さんっ。」のように， 人名および人名相当表現を含んでいる文末表現， さらに挨拶・掛け声・悲鳴などは除外の対象とする．

付与を行った結果，1,122件の文末表現が得られた． 文末表現に付与した意図属性と，その意図属性を持つ文末表現の数を表2に示す．

表 2: 意図属性付与の結果

意図属性	文末表現の数	具体例
伝達	309	「かもしれない。」「たんだよ。」
要求	136	「してよ。」「なさい。」
伝達;確認	127	「たね…。」「なあ…。」
質問	67	「たか？」「てる？」
否定;拒否	57	「ない！！」「ないんだ。」
確認	50	「でしょ？」「よね。」
伝達;肯定	49	「です。」「なんだぞ。」
否定	48	「じゃないし。」「なくて。」
伝達;要求	37	「てね…。」「だっ！」
受諾	36	「いいよ。」「てるよ。」
伝達;質問	34	「たかなァ…。」「たんじゃ。」
伝達;受諾	32	「ってば。」「もん。」
要求;受諾	31	「たい。」「ましょう。」
質問;確認	29	「だったの？」「てるんだっけ？」
拒否	17	「たくない。」「てやんない。」
要求;否定	13	「んじゃないわよ。」「じゃないよっ。」
要求;拒否	10	「なくても…。」「ちゃダメよ。」
伝達;否定	9	「じゃないの。」
確認;否定	8	「ねえ。」
確認;要求	5	「なっ！」
質問;要求	5	「ないの？」
要求;肯定	3	「いいじゃないか。」
肯定;受諾	2	「いいから。」
肯定	2	「とも。」
質問;否定	2	「かよ。」
確認;受諾	2	「もんねー。」
質問;受諾	1	「ますか。」
伝達;拒否	1	「ご免…。」