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おわりに

本研究では,使用頻度が高い日本語結合価パターン(200件)を対象に対応する 中国語結合価パターンを作成し,日中機械翻訳 における結合価パターン翻訳方式の可能性と問題点を検討した.その結果によれ ば,使用頻度が高く,意味的な訳し分けが必要と見られる日本語単文表現に対し て,約80%は,正しい中国語訳文が得られることが分かった.従って,日英翻訳用に作成 された結合価パターン対の日本語パターンは,日中翻訳のための結合価パターン対の作成にお いても有効だと言える.

また,翻訳誤りの分析によれば,誤りの大半は,日本語結合価パターンのカバー範囲の不適切さに起因していることが分かっ た.翻訳誤り20%のうちの15%は,日本語結合価パターンに適合した入力文が, 必ずしも対応する中国語結合価パターンで訳すことはでき ず,意味によってより細かく訳し分けなければならないものであった.この問題 を解決するには,中国語の表現構造に着目し てそれに対応するように日本語結合価パターン自身を見直すこと,また, 適合する日本文の範囲の適正化を図るため,日本語結合価パターン内の変数の意 味的な制約条件を見直す必要のあることが分かった.

ところで,副詞の語順の問題や時制,相の問題で正しく訳せないも のも5%程度存在するが,これらは,結合価 文法の枠組みを超える問題であり,これらの問題を解決するには,副詞,助動詞 などの表現要素を含むパターン辞書を開発する必要があると思われる.

本研究では,使用頻度の高い日本語結合価パターンの一部を対象に日中結合価パター ン辞書を作成したが,日英翻訳用の結合価パターン辞書に収録された日本語結 合価パターンは,日中翻訳でもかなり有効であることが分かったので,今後は,残された日本 語結合価パターンに対しても中国語結合価パターンを作成し, 実験的な改良を行うことにより,日中結合価パターン辞書を実現したい.


平成18年4月11日