そこで,本研究では,日中翻訳を対象に想定して,日中翻訳における結合価パターン方式の有効性を評価
するため,結合価パターン辞書を部分的に作成し,作成した結合価パターンを用
いて,翻訳実験を行う.また,翻訳実験の結果により,結合価パターン翻訳方式
の効果を評価する.
具体的には,結合価パターンによる方式は,語義数の多い用言の訳し分けにおいて特に
効果が期待される方式である.通常,語義数の多い用言は,使用頻度も高いと
考えられるので,本研究では,使用頻度の高い日本語結合価パターンを対象に日中結合価パター
ン辞書を作成し,さらに,日中結合価パターンを用いて翻訳能力を検討する.
翻訳試験の結果により,翻訳文の全体には,評価値Aが80(160/200) %,評価値B が7.5(15/200)%を得られた.翻訳実験を通して,日中翻訳における結合価パターン翻訳方式は大変有効な方法が分かった.
検討の結果では,作成した中国語結合価パターンは,日英翻訳のための日本語結合価パターンを利
用した.そのために,一つの日本語結合価パターンに対して,複数の中国語結
合価パターンが対応する場合がある.この原因で,一つの中国語結合価パターン
に定義出来ず,翻訳全体の精度は,約15%(30/200)悪くなった.
問題を解消するために, 今後の課題として,日本語語彙大系の「意味属性体系」を細かく,及び,追加す
る必要性があると考えている.
また,日中結合価パターン辞書を完成して,機械翻訳に応用すれば,日中機械翻訳の全体も,高い翻訳品質
を得られると考えている.