音声の音響音韻的な性質は音響パラメータによって特徴づけられるが,音声を構 成する言語音の音韻識別には,音響パラメータの全データが必要になるわけではな い.音韻識別に必要な部分を特徴パラメータと呼ぶ.
従来経験的に,音声情報はそのスペクトルによって特徴づけられることが知られ てきた.その1つの表現がフォルマント構造である.音声波形のスペクトルが複数 個の共振周波数の存在によって特徴づけられることは古くから知られており,そ の共振を周波数の低い方から順番に「第1フォルマント」,「第2フォルマント」,… と名付けられている.
波形とスペクトルの関係は原理的にはフーリエ変換で記述できる.従来その処理 は,帯域フィルタ群による周波数分析によって近似的に実現されてきた. 最近になって,計算機による高速フーリエ変換(FFT)の技術が実用化され,ディジ タル化された波形からそのスペクトルを高速フーリエ変換によって直接求めるこ とがスペクトル分析の主流になっている.