next up previous contents
次へ: 文献目録 上へ: honron 戻る: 5.2.4 名詞のまとめ   目次

まとめ

本稿では,単文において結合価文法の動詞と名詞の訳し分けの精度を調 査した. 具体的には,IPAL辞書の見出し語に登録されている動詞と名詞についての例文を ALT-J/Eで翻訳し,その結果を評価する方法で調査を行なった. ALT-J/Eの使用により,パターン決定の際に頻度情報が用いられ,人手で一意 に決定できないものについても正解する場合が有ったと考えられる.しかしそ の結果も訳語選択の根本に結合価文法を用いているので,それも含めて結合価 文法の訳語選択能力の評価とした.

その結果,特に動詞についてはデフォルトの訳語と比べ34%の精度の向 上が見られた.しかし名詞はパターンの性質などから顕著な効果は見られず, 6%の向上にとどまった.また失敗例の分析から,パターンの拡充などによっ て,結合価文法の特徴を限界まで用いることができれば,動詞においてはさらに精度向上が期 待できることがわかった.しかし,名詞においては結合価パターンが動詞の訳 し分けを目的に作られた経緯から,現在のものでは名詞の訳し分けが困難であ ることがわかった.しかし現在のパターンにさらに詳しい意味属性の定義や任 意格を追加することにより,名詞の訳し分け精度を向上させられる可能性があ ることがわかった.以上の考察から現在の結合価パターンにおける限界は動 詞で98〜99%,名詞で94%と推測される.

今後は本研究で対象としなかったIPAL辞書以外の動詞,名詞についても調査を 行ない,結合価文法の効果をより詳しく検証する必要があると考えられる.

謝辞
本研究の作成にあたり,御指導頂きました徳久助手,池原教授,村上助教授に 厚くお礼申し上げます.

また本研究で用いた,「ALT-J/E」および言語関係の資源はNTTとの共同研究の関係 から使用させて頂きました.ここにお礼申し上げます.



平成15年5月19日