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考察

結合価パターンを用いた二種類の絞り込みの手法はそれぞれ大幅に候補文を減ら すことができ、結合価パターンは候補文の絞り込みに有効であることが確認でき た。

しかし、全ての文に対して有効ではなく、各手法における成功率を上げる必要がある。

最多格要素一致による絞り込みの失敗には、次のような原因が挙げられる。 結合価パターンは全ての格要素(名詞+助詞)に対して制約を持っておらず、一つ の用言に対し複数のパターンが存在する。このために、例えば入力文が三つの格 要素で構成されていても、入力文の意味を満たす結合価パターンは一つの格要素 しか制約していない場合がある。このような場合、用言の等しい他のパター ンがより多くの格要素を制約し、誤った候補文がその制約条件を満たしていれば、 正解文は除外される。 また結合価パターンは用言に強く左右され、異なる用言では制約される格要素の数に差 がある。このため用言を誤った場合にも同様の状況が起こり、正解文は除外され ると考えられる。

最大意味属性得点による絞り込みの失敗は、 入力文の意味と一致する結合価パターンの意味的制約が比較的弱く、より強い制 約を持ったパターンと一致する誤った候補文が存在する場合に、最も多く見られた。

正解候補文を一つに絞り込めなかった原因は日本語の構造、特に主格によるとこ ろが大きい。日本語は主格にほとんどの名詞を用いることができ、結合価パ ターンによる主格への意味的制約も柔軟性を持たせるために比較的緩いものになっ ている。そのため主格での名詞の違いはそれほど制約に反映しない。また音声認 識において「名詞+が」と「名詞+は」の判別は比較的困難であり、またこれら は意味的に見ても大きな違いはないため、区別することが困難である。

これらの問題は、結合価パターンのみでの解決は難しく、他の手法との組み合わ せが必要と考えられる。



平成14年5月1日