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次へ: おわりに 上へ: paper4 戻る: 実験結果

考察

評価実験において、英語時間表現が一意に決定できなかった例と,誤った時間表 現を選択した例を示す.

1. 英語時間表現が一意に決定できなかった例


(例文7) 私は,何冊かの本を失った.


例文7は,まだ本を失った状態が続いている場合は完了形となり,見つかって いる場合は過去形となる. このように1文だけでは判断ができない文が機能試 験文集の単文では,約47%存在した.

また,特に一意正解率が低かった関係節を含む文の例を以下に示す.


(例文8) 犬を探してくれた方には礼をします.


一般に従属節を含む日本語における従属節のル形とタ形は,発話時において事態が未了か完了かといっ たアスペクトを表す. そのため例文8では,主節の動詞が示す時点で,その行為が完了したことを示してお り,発話時との時間関係を表していない(図6).そのため従属節でも発話時との時間 的関係を示す英語での候補が1つに絞れない.



\includegraphics[scale=0.5,clip]{kousatu-kankei.eps}
図6: 関係節を含む例

例文7,8において,正しい英語時間表現を選択するためには、前後の文脈や分野 依存性などから正しいテンス・アスペクトを決定する必要がある.

2. 誤った英語時間表現を選択した例


(例文9) 線路が私の家のそばを通っている.
The tracks passes by my house.

本研究の規則では,動作動詞「通る」のテイル形は現在進行形と訳すが,正解の訳は現在形 となっている.これは,テイル形が一時的な動作も永続的な状態もどちらも表せ るのに対して,英語の進行形が一時的な動作しか表さないことから来ると思われ る.例文9のような,テイル形と進行形のアスペクトのずれによって誤った候 補を選択した文が、機能試験文集200文の中に9文存在した.

この例文を正確に訳すためには,動詞の時間的性質だけでなく,名詞と動詞 の意味的関係などの,他の判断材料の導入が必要である.


平成13年5月1日