また,特に一意正解率が低かった関係節を含む文の例を以下に示す.
(例文8) 犬を探してくれた方には礼をします.
一般に従属節を含む日本語における従属節のル形とタ形は,発話時において事態が未了か完了かといっ
たアスペクトを表す.
そのため例文8では,主節の動詞が示す時点で,その行為が完了したことを示してお
り,発話時との時間関係を表していない(図6).そのため従属節でも発話時との時間
的関係を示す英語での候補が1つに絞れない.
例文7,8において,正しい英語時間表現を選択するためには、前後の文脈や分野
依存性などから正しいテンス・アスペクトを決定する必要がある.
2. 誤った英語時間表現を選択した例
(例文9) 線路が私の家のそばを通っている.
The tracks passes by my
house.
本研究の規則では,動作動詞「通る」のテイル形は現在進行形と訳すが,正解の訳は現在形 となっている.これは,テイル形が一時的な動作も永続的な状態もどちらも表せ るのに対して,英語の進行形が一時的な動作しか表さないことから来ると思われ る.例文9のような,テイル形と進行形のアスペクトのずれによって誤った候 補を選択した文が、機能試験文集200文の中に9文存在した.
この例文を正確に訳すためには,動詞の時間的性質だけでなく,名詞と動詞
の意味的関係などの,他の判断材料の導入が必要である.