2.2で述べた方向領域の考え方を、2対象間の位置関係の距離的な面に適用して みると、例えば「前方」や「後方」という表現に対して、「背後」や「隣」など は明らかに近い距離関係を提示していると言える。そのような方向提示語句のも つ距離的性質を距離特性と呼ぶ。距離的特徴において3つのパターンを定義し、 用いられた各表現に対し以下のように対応させる。
1.近接関係提示型
2つの対象が接触あるいは、非常に近い距離で位置関係 を構成しているようなタイプで、「背後」、「隣」が この特性を持つ。
2.近距離提示型
2対象物が比較的近い距離関係にあるタイプで、「前」「真前」「正面」「手前 」「うしろ」「真うしろ」「向こう」「右」「左」「横」「真横」がこの特性を 持つ。
3.遠距離提示型
2対象物が比較的離れた距離関係にあるタイプで、「向かい」「前方」「後 方」「真上」「真下」がこの特性を持つ。
また、方向提示語句のみでは方向以上の情報を持たない、つまり距離特性を持たないも
のもあり、「上」「下」がこれに該当する。