「前」と「正面」は方向においては同じであるが、それぞれが提示する 「前」という空間領域と、「正面」という空間領域には明らかに差がある。「正面」が 非常に制限された空間領域を提示するのに対して、「前」は同じ方向でありながら広 がりを持った空間領域を提示すると考えられる。このような2パターンの方向領域を 仮定し、方向提示語句を対応させる。今回扱った標本のなかに見られた方向提示 語句20種については以下のように各パターンに対応させる。
1. 領域に広がりがあるタイプ
前・手前・うしろ・向こう・横・右・左・上・下
2. 領域に広がりがないタイプ
真前・前方・正面・向かい・真うしろ・後方・背後・
真横・隣・真上・真下