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2.1 方向の決定と方向概念

位置関係の構成においては、方向の決定が第一条件である。この決定には観察 者(話者)の視点が問題になる場合とならない場合の2つのパターンが存在する。 ここで重要となるのが「方向概念」であり、次の2種類を定義する。


1. 空間が持つ方向概念

我々が存在している地球上の空間には重力が存在する。対象の位置関係をイメー ジしようとするとき頭のなかに描き出された空間にも、やはり無意識のうちに重 力という感覚を持ち込んでいるであろう。この「重力」と大きく関わるのが上下 方向の概念である。イメージを作ろうとする空間には重力という概念があり、そ れは「上」、あるいは「下」という方向を作り出す。つまり、空間は「上」、 「下」の方向概念を持っていると考えられる。


2. 対象が持つ方向概念

対象は多くの場合、それ自身が何らかの「方向」を持っている。例えば「テレビ」 という対象を考えると、話者の視点に関係なく「上」、「下」、「前」、「後」 のような方向がはっきりと決まる。 このような話者の視点に影響されない、方向的特徴を対象の持つ方向概念として 適用する。 逆に、「ボール」などのように全く方向概念を持たない対象も存在する。



\includegraphics[width=7.2cm,clip]{hoko_kote.eps}


図1 方向の固定



例として「テレビの前の箱」を考えてみる。この場合「テレビ」は位置関係に おいて基準となり(基準対象物)、また「前」は方向関係を提示する語句(方向 提示語句)となるのだが、この「前」という方向概念を「テレビ」が持っている ために観察者の視点に関係なく方向が決まる。さらに「上」、または「下」の方 向関係ならば、その空間自体に方向概念があるため、基準対象物の方向概念にも 関係なく方向が決まる。

つぎに、「箱の前のテレビ」を考えてみる。この場合、基準対象物である 「箱」は「前」という方向概念を持っていない。そのため、方向を決めるには観 察者の視点が必要になる。また、方向関係語句の「手前」や「向こう」の持つ概 念を対象が方向概念として持つことはないので、この場合も観察者の視点が必要 となる。よって、これらの場合は観察者の視点を定めることで方向の決定が可能 になる。




平成13年11月25日