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新聞記事等から抽出した並列型名詞句の用例分析を行った結果より、
「形容詞+名詞A+と/や+名詞B」における形容詞の係り先決定法を提案するために、
以下の仮説を作った。
- 1.
- 共起の有無
A係りとなるのは形容詞と名詞Bとの意味的結合力が極めて弱いときのみであり、
「形容詞+並列型名詞句」には「形容詞+名詞B」が共起しない場合がある。
以下に例を示す。
「強い+意志」は共起するが、「強い+誠実さ」は共起しない。
- 2.
- 抽象度の差
並列型名詞句は形容詞を利用し、名詞Aと名詞Bの抽象度の差を小さくする性質があり、
名詞Aに比べて名詞Bの意味がより抽象的と見られる場合は、A&B係りとなる傾向が強い。
これは、形容詞の限定用法の性質を反映したものと考えることができる。以下に例を示す。
例において、形容詞「危ない」は「家具」のみでなく「品物」にも係るが、「品物」は「家具」よりも抽象度が高いことが指摘できる。
- 3.
- 「こと」「もの」
抽象名詞である「こと」「もの」は、日本語の中で最も抽象度の高い名詞であり、他のどんな名詞よりも情報含有量が小さいために、常に形容詞の修飾を必要とし、
形容詞との強い結合力を得る。以下に例を示す。
抽象名詞「こと」は「職業」に比べ非常に情報含有量が少ないため、形容詞の修飾を必要としている。そのため抽象名詞「こと」は「職業」よりも形容詞との強い結合力が強い。
- 4.
- 意味距離
A&B係りは、A係りに比べ意味の似通った名詞Aと名詞Bを並べる傾向が強く、
A係りとA&B係りでは名詞間の意味距離に差がある。以下に例を示す。
A係りでは「歴史、必然性」と名詞Aと名詞Bの意味距離が大きいのに比べ、
A&B係りでは「テント、寝袋」と意味距離が小さい。
MatobaKazuyuki
平成11年4月16日