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名詞間のバランス

「形容詞+並列型名詞句」(形容詞+名詞A+並列助詞+名詞B)において、 並列助詞は名詞Aと名詞Bとの間に「バランス」をとる傾向がある。 この傾向は助詞「や」において、さらに顕著に現れている。 A係り、A&B係りにおける名詞間のバランスのとり方について以下に詳しく述べる。
1.
A係り

(a)
「形容詞+名詞A」と「名詞B」で抽象度のバランスを保つ。 以下に例を示す。

15#15 (5)

名詞「こと」は「職業」に比べ抽象度が高いが、形容詞「悪い」を独占することによって、その抽象度を下げ、「悪い+こと」対「職業」で抽象度のバランスをとっている。

(b)
「形容詞+名詞A」と「名詞B」で「観点」についてのバランスを保つ。 以下に例を示す。

16#16 (6)

観点「大きさ」において、「ネズミ」は「猫」よりも小さいが、 形容詞「大きい」が「ネズミ」に係ることによって、 「大きい+ネズミ」対「猫」で、観点「大きさ」においてバランスをとっていると考えられる。

2.
A&B係り
A&B係りには、名詞Aと名詞Bに意味の似た名詞を並べ、 「名詞A+名詞B」はひとまとまりとして扱われる傾向がある。 ひとまとまりとなった「名詞A+名詞B」は、 名詞Aに続け名詞Bを置くことで例示したり、名詞Aと名詞Bを対比させたりする。以下に例を示す。

17#17 (7)

例において、同一カテゴリ「宿泊施設」に属する「ホテル」に続き「別荘」が例示されている。 また「電子」と「陽電子」は対比関係にある。 「ホテル+別荘」、「電子+陽電子」はそれぞれ、例示、対比の関係において強く結び付いている。形容詞が強く結合した「名詞A+名詞B」に係るため、A&B係りになると考えられる。



MatobaKazuyuki 平成11年4月16日