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抽象名詞「の」の交替現象について

「の」の交替現象とは,文中の「の」を,文意を変化させることなく他の語と置換できる ことである.中でも「の」とコトについては埋め込み節をつくる代表的な形式として, 野田によってそれぞれの本質的な意味の違いが述べられている[1].さ らに,他の単語との交替現象も観察することができる.次の例文では「もの」,「とき」, 「ひと」[*],「ところ」と交替することが可能である.

そして,次の例文ではどのような名詞とも交替不可能である.

上記の例での「ので」「のに」は橋本文法でいうところの接続助詞である.よっ て,抽象名詞とは別の品詞として捉えられている.しかし,本論文では三浦文法 の立場をとる.三浦文法とは,時枝誠記により提唱され三浦つとむにより発展的 に継承された言語過程説に基づく文法である[5].三浦文法では 抽象名詞において,以下の点で橋本文法と違っている[6].

1.
準体助詞「の」,終助詞「の」は形式名詞とする
2.
接続助詞「ので」「のに」,終助詞「のだ」はそれぞれ,形式名詞「の」 +[格助詞「で」/肯定判断の助動詞「だ」の連用形「で」]とする

ここで,「形式名詞」とは「抽象名詞」と同じ単語を指しているが,本論文では 形式だけあって内容のない語は存在しないとする時枝の考え方から「抽象名詞」 と呼ぶことにする.



Noboru KURUMAI
2001-03-20