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意味属性以外の観点

これまでの検討において意味属性では訳し分けが出来なかった例と、それらを 訳し分けるために必要と思われる観点を表5に示す。

表5 意味属性による訳し分けが不可能な例
観点 見出し語 意味属性 英訳語  

目的

えさ [飼料] (動物などを飼うための) :feed
    [飼料] (魚、動物をとるための) :bait
原因 [怪我] 刃物による切り傷 :cut
    [怪我] 物理的、精神的 :wound
    [怪我] (偶然に受けた) :injury
立場 [表] 裏に対して :face
    [表] 内側に対して :surface
形状 帽子 [帽子] (縁つき) :hat
    [帽子] (縁なし) :cap
部位 [ひげ] (あごひげ) :beard
    [ひげ] 口髭 :mustache
    [ひげ] 頬髭 :whiskers
種類 えび [えび・かに (車えび) :prawn
    ・たこ・いか]    
    [魚介類]    
    [えび・かに (小えび) :shrimp
    ・たこ・いか]    
    [魚介類]    
    [えび・かに (いせえび) :lobster
    ・たこ・いか]    
    [魚介類]    


まず、「えさ」という名詞は、英語では使用目的によって''feed''と''bait'' を使い分けるが、本研究で用いた意味属性体系ではどちらの訳語も[飼料] が付与されているため、この2つを区別することはできない。

また、「傷」のようになんらかの原因による結果を表しており、その原因の 違いによって訳し分けのある名詞や、「表(おもて)」のように対をなす 語があり、その対応する語によって訳語が変わる名詞なども、意味属性では 訳語候補の違いを表すことができない。

さらに、形状によって''hat''と''cap''が区別される「帽子」、どの 部分を指すかによって''beard''、''mustache''、''whiskers''が使い分けられる 「髭」、種類によって''prawn''、''shrimp''、
''lobster''と呼び方の異なる「えび」 などは、いずれも具体的に何を指しているかが分かれば訳し分けは 可能だが、意味属性のみでは訳語を決定することはできない。

これらは、意味属性では訳語候補間の違いを表せない、あるいは、 非常に個別性が高いため、訳し分けるための意味属性を用意しても 全体的な精度の向上にはつながりにくい名詞である。 このような名詞については、他の単語との共起などから情報を 得る必要があるだろう。



kirisawa
2000-03-15