4.1節の評価結果から見て,現状の文型パターンの被覆率は,実用上,まだ十分とは言えない.現在の文型パターンは,主として対訳例文の線形な要素を変数や関数に置き換えることによって作成されているが,線形な要素でも訳文生成で役立つ要素については,「任意要素」として文型パターンに記述されている.また,助詞,助動詞は表記のレベルで関数化されている.しかし,異なる時制や様相への適用は考えられていないこと,日本語に顕著な語順の自由度も考慮されていないことなど,種々の改良すべき余地を残している.
そこで,本章では,文型パターンの記述方法の違いによる被覆率特性の違いを明らかにするため,「任意要素指定が被覆率に与える効果」と「時制,相,様相の情報が被覆率に与える影響」についての評価実験を行った.