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(2)適合文型パターン数

文型パターンでは,「離散記号」などによりさまざまな「任意要素」の存在が認められている.そのため,入力文に適合する文型パターンにおいて,1つの文型パターンに適合する仕方は,必ずしも一通りとは言えず,複数の適合の仕方(解釈の多義)が発生する場合がある.これは,「完全一致」する文型パターン,「部分一致」する文型パターンに共通する現象である.

以下,その例を示す.なお,例では文型パターンにマッチしなかった原文の要素を《 》で示している.この要素は,文型パターンとの照合において,「原文任意記号(離散記号)``/''」に一致したと判定されたものである.

例1)入力文:「人を押しのけながらゲートのほうへ進んだ。」

1.1
<文型1> #1[$N1$は]/ $VP2$ながら / $VP3$.kako
適合1: 人を押しのけながら ゲートのほうへ進んだ。
適合2: 人を押しのけながら 《ゲートの》 ほうへ進んだ。
適合3: 人を押しのけながら 《ゲートのほうへ》 進んだ。
<英語文型> ($N1$ $\vert$ I) $VP3$.past $VP2$.
(凡例)#[ ]:「要素補完記号」


例2)入力文:「春の遠足は学年ごとに違う場所に行った。」

1.1
<文型1> #1[$N1$は]/ #2[$N3$の] /#4[$AJ5$]/ $N6$ / $V7$.kako
適合1: 春の 《遠足は学年ごとに違う》 場所に 行った。
適合2: 春の 《遠足は》 学年ごとに 《違う場所に》 行った。
<英語文型> ($N1$ $\vert$ I) $V7$.past to #2[$N3$.poss] #4[$AJ5$] $N6$.


1.1
<文型2> $NP1$は/ $NP3$ / $VP4$.kako
適合1: 春の遠足は 学年ごとに違う場所に 行った。
適合2: 春の遠足は 学年ごとに 違う場所に行った。
適合3: 春の遠足は 学年ごとに 《違う》 場所に行った。
<英語文型>$NP1$ $VP4$.pft in $NP3$.

【説明】適合文型2では他にも6通りの適合の仕方が存在するが,いずれも対応する英語文型パターンは翻訳に不適切である.


元来,同一の文型パターンに正しく適合する仕方は,高々1通りのはずであるから,上例のような場合は,複数の適合の仕方の中から,どれが正しい適合の仕方であるかを判定する方法が問題となる[*].そこで,適合する文型パターンについては,文型パターン当たり,何通りの適合の仕方があるかについて評価した.

8に,適合文型パターンを1つ以上持つ入力文を対象に,1文あたり適合した文型パターンの数と適合した文型パターン1つあたりの適合の仕方の数を示す.


1.5
表 8: 入力文1文に対する適合文型パターン数(適合文型パターンを持つ入力文の場合)
文型パターン種別 延べ適合文型パターン数 異なり文型パターン数 適合文型パターン当たり
  の平均 の平均 の解釈の数
単語レベル  14.05 件  9.79 件 1.44 件
句レベル 164.72 件 51.48 件 3.20 件
節レベル  41.37 件  9.85 件 4.20 件
混合レベル 220.11 件 71.09 件 3.10 件

表中の「延べ適合文型パターン数の平均」は,1入力文に対する適合文型パターン数の総和で,同一の文型パターンに複数の適合の仕方があった場合は,適合の仕方の数をカウントアップしている.「適合文型パターン当たりの解釈の数」は,(前者)/(後者)で計算される.なお,混合レベルは3レベルの和である.この表から以下のことが分かる.

(1)
単語レベルでは,入力文あたり適合する文型パターン数が少ない.また,文型パターン当たりの解釈の数は最も少ない.
(2)
句レベルの異なり文型パターン数は,単語レベルの約5倍も多く,文型パターン当たりの解釈の数も2倍以上である.
(3)
節レベルの場合は,異なり文型パターン数は少ないが,文型パターン当たりの解釈の数は最も多い.

単語レベルで適合文型パターン当たりの適合の仕方(解釈多義)が1.44件であることから,文法的レベルの文型パターンでも,単語レベルでは,かなり個別性の高い文型パターンとなっていることが分かる.句レベル,節レベルになるに従って,文型パターンの解釈の多義が増加していることから,これらのレベルでは,今後,意味的な制約など,より強力な適合条件を指定することが必要と考えられる.


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平成16年11月17日