以下,その例を示す.なお,例では文型パターンにマッチしなかった原文の要素を《 》で示している.この要素は,文型パターンとの照合において,「原文任意記号(離散記号)``/''」に一致したと判定されたものである.
例1)入力文:「人を押しのけながらゲートのほうへ進んだ。」
1.1
<文型1> | #1[は]/ | ながら | / | .kako。 |
適合1: | 人を押しのけながら | ゲートのほうへ進んだ。 | ||
適合2: | 人を押しのけながら | 《ゲートの》 | ほうへ進んだ。 | |
適合3: | 人を押しのけながら | 《ゲートのほうへ》 | 進んだ。 | |
<英語文型> ( I) .past . | ||||
(凡例)#[ ]:「要素補完記号」 |
例2)入力文:「春の遠足は学年ごとに違う場所に行った。」
1.1
<文型1> | #1[は]/ | #2[の] | /#4[]/ | に | / | .kako。 |
適合1: | 春の | 《遠足は学年ごとに違う》 | 場所に | 行った。 | ||
適合2: | 春の | 《遠足は》 | 学年ごとに | 《違う場所に》 | 行った。 | |
<英語文型> ( I) .past to #2[.poss] #4[] . |
1.1
<文型2> | は/ | に | / | .kako。 |
適合1: | 春の遠足は | 学年ごとに違う場所に | 行った。 | |
適合2: | 春の遠足は | 学年ごとに | 違う場所に行った。 | |
適合3: | 春の遠足は | 学年ごとに | 《違う》 | 場所に行った。 |
<英語文型> .pft in . |
元来,同一の文型パターンに正しく適合する仕方は,高々1通りのはずであるから,上例のような場合は,複数の適合の仕方の中から,どれが正しい適合の仕方であるかを判定する方法が問題となる.そこで,適合する文型パターンについては,文型パターン当たり,何通りの適合の仕方があるかについて評価した.
表8に,適合文型パターンを1つ以上持つ入力文を対象に,1文あたり適合した文型パターンの数と適合した文型パターン1つあたりの適合の仕方の数を示す.
表中の「延べ適合文型パターン数の平均」は,1入力文に対する適合文型パターン数の総和で,同一の文型パターンに複数の適合の仕方があった場合は,適合の仕方の数をカウントアップしている.「適合文型パターン当たりの解釈の数」は,(前者)/(後者)で計算される.なお,混合レベルは3レベルの和である.この表から以下のことが分かる.
単語レベルで適合文型パターン当たりの適合の仕方(解釈多義)が1.44件であることから,文法的レベルの文型パターンでも,単語レベルでは,かなり個別性の高い文型パターンとなっていることが分かる.句レベル,節レベルになるに従って,文型パターンの解釈の多義が増加していることから,これらのレベルでは,今後,意味的な制約など,より強力な適合条件を指定することが必要と考えられる.